2020年12月28日
社長の仕事は決定・実行・責任である。社長の第一の仕事の「決定」のうち、重大な決定については、助言を求めることが有意義だ。その助言機能を果たす人を参謀役と呼ぶ。このことは第一回提言で解説した。
参謀役は100人未満の規模の場合は社外の専門家でよいと思う。財務会計や資金調達、人事労務、法務など分野ごとに専門家に助言を求めればよろしい。その一種がコンサルタントである。
社長は必要に応じて必要なコンサルタントを使いこなせばよい。コンサルタントを使いこなしている社長と、そうではない社長がいる。それはコンサルタントという職種について、不明、不信、無関心だからなのだろう。その責任は自らの仕事をわかりにくいものにしているコンサルタント側にあると思う。
そこで、今回はコンサルタントである筆者(福永)が、社長がコンサルタントを使うときに役に立つコンサルタントの3つの区分法について解説する。
第一の区分方法は、講師型か、コンサルタント型か、である。
コンサルタント型の場合、次に得意分野で区分する。第二の区分方法が業界特化型か、テーマ特化型か、である。
そして、コンサルタントの仕事の進め方は3パターンである。それが第三の区分方法の業務代行型か、顧問型か、ノウハウ導入型か。これらを当社のことを例示しながら解説する。
名刺にコンサルタントと肩書がついていれば誰でもコンサルタントを名乗れる。玉もいるが石もいる。玉石混交だ。たまたま石と出会い、コンサルタントという職種へ不信感をもつ社長もいる。
コンサルタントはコンサルタントの数だけ、コンサルタントの仕事の仕方があるといわれる。使う社長のニーズと、使われるコンサルタントの仕事の方法にミスマッチが生じることもあると思う。これもコンサルタントの悪印象につながる。
一方で社長のニーズに合致して参謀役として大いに貢献するコンサルタントもいる。わが社の永続的な繁栄のために目指すべき方向の決定を正しいもの、成功率の高いものにするために、社長にはうまくコンサルタントを使いこなしていただきたい。そのヒントとしてコンサルタントの区分方法を3点、紹介しよう。
読者(社長)の知るコンサルタントはこの区分法でいうと、どういうタイプなのかを知ることで、自分のニーズに合うのかどうかを知ることができる。
講演や公開セミナーや企業内研修の講師をコンサルタントが行うことがある。したがって講師業はコンサルタント業の一部である。この講師業の仕事の割合により、コンサルタントを区分する。講師業が多い講師型か、講師業の仕事が少ないコンサルタント型か、その中間型に区分できる。
・講師型
講演や公開セミナーや企業内研修の講師を主たる業務にしているコンサルタント。講師経験が豊富なので講義はうまい。社員教育を頼みたいなら講師型がよいだろう。ただし、一般論になりがち。講義がうまいことと社長の参謀役は能力が異なるので、社長の参謀役が務まるわけではない。学校やカルチャーセンターの講師に、わが社の経営戦略の助言を求めることに無理があることを社長には知ってもらいたい。
・コンサルタント型
講師業を全くしないコンサルタントもいるが、レアケースだ。ほとんどのコンサルタントは、多少は講師業をやるものだ。講演や公開セミナーは、コンサルタントを求める社長とコンサルタントの出会いの場でもあるからだ。また社長のコンサルの後、決めたことを推進するためにリーダーの研修を行うこともある。
講師経験は講師型よりは豊富ではない。中身はあっても講義がうまいとは限らない。参謀役を探している社長は中身で判断したほうがよい。コンサルタント型は得意分野と仕事の進め方で区分できる。後ほど解説する。
・福永雅文の場合
コンサルタント型である。
独立前に住宅業界の仕事の経験があった縁で、1999年に36歳でコンサルタントとして独立した年から、大手住宅設備メーカーの仕事をはじめた。同社の主宰する住宅リフォームのフランチャイズチェーンの仕事である。
加盟店たる工務店・工事店が使う営業マニュアルを作成した。加盟店を指導するスーパーバイザーと加盟店のオーナーの教育に携わってきた。営業経験のない、または乏しい会社に営業の方法を導入していった。30代後半でコンサルタントとして独立した私のキャリアは講師業ではないコンサルの仕事から始まった。
その後、ランチェスター協会で講師の認定を受け、40歳代となった2003年頃から講師の仕事が増えていった。05年にランチェスターの本(「ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則」日本実業出版刊。同書の新版が18年に出る)が出版され、ランチェスター協会でコンサルタントの責任者となり、講師の養成も行うようになった。講師業の仕事が増えて、40歳代の私はコンサルタント型と講師型の中間的だった。
いま思うと東日本大震災の起きた2011年が転換点だった。同年、日本経営合理化協会より社長向けのCD教材「ランチェスター戦略の実務」が発行された。大震災という社会不安や変革期において社長のコンサルの需要が活性化したことと、社長専門の教育機関から教材が出たことが偶然重なった。経営相談やコンサルティングの仕事が増えていった。50歳代となり、中間型からコンサルタント型へと段階的に戻っていく。
そして、デジタル化が進み、企業は中期的に経営や営業のやり方を変えていく必要性が取り沙汰されていた2020年のいま、コロナにより、新たな経営や営業への取り組みが急務となった。その種の経営相談が増えた。開業22年目、57歳となった私は日本経営合理化協会より社長向けの書籍「小が大に勝つ逆転経営 社長のランチェスター戦略」が出版された。今度も社長のコンサル需要と私の著作が重なった。
この難局、あるいは変革期の社長を戦略で応援したい。これからもコンサルタント型でいくと考え、このブログとメールマガジン「社長の戦略―判断基準と考え方」を始めた。
講師も行っているが、講師型の方とはやり方が異なると思う。講義した後、個別相談に応じて、戦略を策定してもらい、それに対してフィードバックしている。研修の形式をとったコンサルティングである。企業内の営業管理者を対象に行う場合と、地域の社長に集まってもらって行う場合がある。
コンサルタント型の場合、次に得意分野は何かを確認する。業界特化型コンサルタントか、テーマ特化型コンサルタントか、の2区分である。特定業界に強いのか、特定テーマに強いのか。
・業界特化型コンサルタント
特定業界に特化している。その業界で長く働いて生きた人、その業界のコンサルを長く経験している人。その業界の企業が繁栄していくことを、研究開発・設計製造・マーケティング・販売・アフターに到るまでの事業の流れや、人事や財務に到るまで精通したコンサルタント。
同業での経験が豊富で、幅広いテーマに対応できる。ただし、他社との差別化のために業界の常識を打破するような発想を求めるのなら向いていない。彼も我も業界人だからだ。また、大きな業界なら業界特化型コンサルを見つけることはたやすいが、小さな業界ならコンサルの選択肢が少ない。
・テーマ特化型コンサルタント
営業、マーケティング、製造現場の生産性向上といった大きなテーマから、社長のスピーチの技術を指導するようなニッチなテーマまで、テーマに特化しているコンサルタント。営業といっても個人宅に飛び込む営業が得意なコンサルタントと、大企業相手に億単位の商談を行う営業が得意なコンサルタントとでは大違いなので、どんな営業のコンサルが得意なのかを確認したほうがよい。
様ざまな業界で一つのテーマの仕事をしていきているので、わが社の属する業界以外の知見をコンサルタントから得られることは差別化のヒントとなる。ただし、テーマ以外のことに精通していないので、何でもかんでも相談してよいわけではない。
・福永雅文の場合
テーマ特化型である。
競争戦略、営業・販売戦略に特化している。ランチェスター戦略を指導原理に、特定分野でNo.1になる経営や事業や営業の戦略策定ノウハウを企業に導入する。特定業界の知見については業界特化型コンサルには劣るが、20年以上にわたり様ざまな業界の仕事を経験している。戦略策定に必要な業界ごとのビジネスモデルや販売チャネルについての知見は充分にあると思う。
得意分野がわかったら、最後にコンサルタントの仕事の進め方を確認する。仕事の進め方は大きく3分類できる。一つが業務代行型、二つ目が顧問型、そして三つ目がノウハウ導入型である。
・業務代行型コンサルタント
たとえば助成金や補助金の申請を代行する中小企業診断士や、人事制度の作成やISOの認証などを代行するコンサルタント。営業マニュアルを作成する業務も代行型だ。税理士や社労士などの仕事のやり方と似ている。
専門的な仕事を単発で依頼することは大変有効と思う。だが、継続的に必要な業務を頼むことには慎重であるべきだ。なぜなら、そのコンサルに頼まなければ業務ができなくなるからだ。税理士や社労士のように長期間依頼し続けることになる。
・顧問型コンサルタント
顧問にはいろいろなタイプがある。①内部顧問:役員定年を迎えた功労者を相談役や顧問として会社に係わってもらうことは多い。シニアの嘱託を顧問と呼ぶ会社もある。②大物顧問:地元財界の重鎮や業界の顔役だった人に顧問になってもらい人脈を紹介してもらう、ご意見番(メンター)になってもらうこともある。
③コンサル顧問:コンサルタントも顧問として社長の参謀役を務めることもある。その役割は様ざまだ。銀行のOBに顧問として銀行交渉をしてもらうなど、役割を明確にすることを奨めたい。
コンサルタントとして企業と長期的に契約することを顧問契約と呼ぶ場合もある。それは業務代行型もしくは次に解説するノウハウ導入型を長期間続けるという意味である。
・ノウハウ導入型コンサルタント
営業や工場の生産性を向上させるなど、特定のノウハウを仕組みとして導入するコンサルタント。魚釣りに例えるなら、業務代行型はあなたの代わりに魚を釣ってくれることを意味する。ノウハウ導入型は魚の釣り方を伝授することを意味する。
補助金の申請のようなことは社長が精通する必要はないので代行してもらうほうがよいと思う。一方、戦略策定のような企業経営の根幹に係わることはノウハウや仕組みを導入し、導入後は自立して策定し自走したほうがよいと思う。
・福永雅文の場合
ノウハウ導入型である。
当社のコンサルティングは「社長の戦略づくりの方法をご指導し、社長の戦略の決定を助言するもの」である。当社が貴社の戦略づくりや書類作成を代行するわけではない。ノウハウや仕組みを導入している。代行をすると、コンサルタントがいなければ戦略を策定できないままだ。貴社はいつまでもコンサルタントに依頼し続けなければならない。
社長の代わりに魚を釣って差し上げるのではなく、魚の釣り方をお教えする。釣り方を習得していただければ、コンサルタントは不要となる。
当社はスポット・コンサルティング(単発の経営相談)と、期間契約コンサルティングのメニューを用意している。他のコンサルティング会社では顧問契約と呼んでいることもあるが、顧問というと、何年も続き、辞め時がわかりにくい。当社では必ず期限を切るので「期間契約」と呼んでいる。
標準メニューである「特定分野でNo.1コース」は月1回×12カ月で完了する。個別にメニューを決める「オーダーメイドコース」は期間もオーダーメイドだが、ほとんどの場合は3カ月から12カ月である。期間満了後に必要があれば、スポット・コンサルティングでフォローしている。ご興味あれば下記を参照のこと。
30歳代の創業期に多かったマニュアル作成は業務代行型である。いまもマニュアル作成に携わることがあるが、「全員参加型のマニュアルづくり」という独自のやり方をお奨めしている。それはマニュアル作成方法を伝授し、内容を監修するノウハウ導入型である。
以上、コンサルタントの三つの区分法を解説した。コンサルタントに助言を求める場合は、まずは自社のニーズにあうコンサルタントはどのタイプなのかを整理しよう。そのうえで、候補となるコンサルタントが講師型かコンサルタント型か。コンサル型なら得意分野と仕事の進め方がどのタイプに該当するのか、質問するなどして確認しよう。こうすればミスマッチは起こりにくくなる。
社長のニーズに合致して参謀役として大いに貢献するコンサルタントがいる。わが社の永続的な繁栄のために目指すべき方向の決定を正しいもの、成功率の高いものにするために、社長にはうまくコンサルタントを使いこなしていただきたい。