2021年08月30日
筆者(福永)はコンサルティング先に「全員参加型営業マニュアル」の導入を進めている。営業部の 全員が参加して営業マニュアルをつくるという手法である。筆者以外にこの手法を行っているコンサル タントを知らない。当社独自の手法と思う。なぜ、この手法が有効なのか、前回の提言43で解説した
>>https://sengoku.biz//福永雅文のブログ/社長の原理原則/第43回_なぜ、全員参加型の営業マニュアルなのか
今回の提言44では「全員参加型営業マニュアル」の作り方を解説する。次の5つの段階で進める。
第1段階 商談プロセスの定義
第2段階 若手がベテランにヒアリングする
第3段階 ロープレ
第4段階 トライアル実施
第5段階 完成、本格運用
第1段階の商談プロセスの定義は、一般のマニュアル作りと同じである。そのやり方はコンサルタン トによって多少の違いはある。筆者は①商談の流れを定義する、②顧客と対面する商談の前後にやるこ とを定義する、③商談の構成を定義する、の3段階で商談のプロセスを分解して定義している。
1 商談の流れを定義する
商談は一般に「アプローチ→ヒアリング→プレゼンテーション→クロージング→受注→アフターサービ ス&次のアプローチ」というプロセスに定義される。アプローチとヒアリングは案件発掘段階、プレゼ ンとクロージングは案件進捗段階、受注以降は案件推進段階である。
2 顧客と対面する商談の前後にやることを定義する
上記で定義したプロセスは顧客と対面する業務である。顧客と対面することを商談と呼ぶ。商談の前に は事前準備をする必要がある。商談の後には報告と事後対応をする必要がある。たとえば「アプローチ 」のプロセスは、⑴事前準備、⑵商談、⑶報告と事後対応、で構成されている。
3 商談の構成を定義する
上記で定義した、各プロセスの⑵商談は、いきなり本題に入るわけではない。本題が終わったら即退席 するわけではない。本題の前には導入の対話があり、本題の後には商談のまとめが必要だ。つまり、商 談は、①導入、②本題、③まとめ、の三つの要素で構成される。
以上に商談を分解して定義していくと図のような構成となる。各プロセスの本題のところが3枠ある のは、本題はボリュームがあるので3つの分割する場合が多いからだ。以上が第1段階である。
第1段階で分解した一つひとつの構成要素で、何をするのか。たとえば、図は「アプローチの商談の 導入」の部分を指し示している。ここでは①あいさつ、②名刺交換、③顧客への関心を示すメッセージ 、④自己紹介(自分自身、会社、商品)、⑤顧客との対話の糸口、の項目を例として示している。それら について、ベテランはどのようにやっているのか、若手がヒアリングする。
ノウハウを伝授するベテランではなく、伝授される若手が主導して進めることがコツである。仕事に 精通しているベテランは教えることのプロではない。ノウハウを体系化しているわけはない。長年の経 験で自然と身についたことを体系だって教えることは難しい。若手の質問にベテランが答える方式が最 もノウハウを引き出しやすい。かつて私(福永)が試行錯誤して、この手法にたどりついた。
聞き取った若手があらかじめ用意した書式に記載して事務局に提出する。書式も重要だ。できるだけ 多くの営業員に参加してもらうが、負担が多くならないように1回1項目を20分くらいでヒアリングする 。こういったことに不慣れな人どうしで行うので、マニュアルづくりに精通し、自社の営業プロセスを 理解しているコンサルタントの指導を受けながら進めるほうがよいと思う。
項目がうまったら事務局がとりまとめ、コンサルタントと点検する。過不足は再びヒアリングする。
ある程度まとまったら、そのマニュアルをもとに第3段階のロープレを行う。ロープレをすることで 過不足が明らかになる。それを加筆修正して、仮版マニュアルの完成である。
第4段階は仮版マニュアルでトライアル実施を行う。実際に顧客との商談をマニュアルを標準にして 実施する。ロープレも行いながら、実施する。実施することでブラッシュアップしたくなる。
それを加筆修正して、マニュアルを完成させる。第5段階の完成、本格運用である。運用後も定期的 に見直す。
以上が、当社が推進している「全員参加型営業マニュアル」の作り方である。トップ、ベテラン、エ ース、中堅、若手、新人…全員が参加して作り上げたマニュアルである。つくる過程が教育の機会でも ある。ご興味あれば問い合わせていただきたい。