ランチェスター法則とは。ランチェスター戦略コンサルタントが解説。


提言53 シェアで利益を増やす方法

2021年11月15日 


●福永雅文のインタビュー動画

どのような考えでコンサルをしているのか
特定市場でナンバー1になる方法、中小企業の新分野進出戦略
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赤字決算をしても会社はつぶれない。会社がつぶれるのは資金繰りがつかないときである。黒字決算をしていても資金繰りがつかなければつぶれる。

前向きな赤字決算もある。会社の健全性を高めるために何かを精算することがある。未来のための投資をすることもある。そんな前向きな赤字なら資金繰りさえできれば、あまり問題はない。

ただし、赤字決算が三期連続で続くと信用が落ちるので、資金繰りが難しくなる。いまは、コロナ対策で資金繰りをしやすい状況だが、程度というものがある。赤字会社は次の決算は黒字を目指していただきたい。

黒字決算を続けてきた会社であればコロナなどの外部環境の影響で赤字を出したとしても、内部留保もあるし、信用もあるから資金繰りは難しくない。一方で、赤字体質の会社が赤字を出すと、資金繰りが難しくなる。

税金を払いたくないから、悪知恵を働かせて赤字決算をしている会社もなかにはある。そんな会社はコロナなどで赤字になると信用が落ちて、資金繰りが難しくなる。節税はするべきだが、租税回避行為は倫理的に大いに問題があるのみならず、自社の財務体質を弱いものにしていることに気づいてほしい。

正直者は損をするという。黒字決算をしてまともに納税すると損をした気持ちになる社長がいるかもしれないが、そんなことをしていると本当に困ったときに助かりにくくなる。筆者は、正直者は瞬間的には損をすることもあるが、結局は得をすると思う。

つまり、会社は赤字でもつぶれないが、持続的な繁栄を遂げたければ黒字決算を続け、黒字体質の会社になることが大切である。では、どうすれば黒字体質の会社になれるか。

今回は黒字体質の会社になるために利益の増やし方を提言する。

利益はシェアによってつくる

企業が利益を持続的に出していくために重要な指標が市場シェアである。これがランチェスター戦略コンサルタントである筆者の主張である。シェアが高いと利益が増える。このことは統計調査で明らかにしている。

大企業を対象とした統計調査の結果については下記の著書で紹介した。主力商品シェアが10%以上の場合、シェアが上がれば上がるほど売上高営業利益率が上がる、つまりシェアと利益は相関することを
示した。

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中小企業を対象とした統計調査の結果については下記の著書で紹介した。市場は小さいが商品のシェアがナンバーワンであるニッチャーは同業他社に比べて一人当たりの営業利益が3倍出ていることを示した。

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このように証拠となる事実(エビデンス)を示して解説しても、ピンとこない社長もいる。「シェアを拡大しようとすると価格競争に巻き込まれて利益率が下がるのでは」との意見である。これはシェアと売上を混同しているからなのだが、実感を伴わないゆえの考えだと思う。シェア(実際には売上)を上げようとして価格競争に巻き込まれて利益を減らしたことは多々あっても、シェアを上げたことで利益を増やした経験がないからと思う。

シェアと売上は異なる。シェアを上げることと、売上を上げることは似て非なることである。どういうことか。

売上志向とシェア志向

どこの地域の、どんな顧客層に、何の商品でシェアを上げるのかといった戦略なしにシェアを拡大しようとするとどうなるか。どこでもいいから、誰でもいいから、何でもいいから売るということになる。するとライバルとの同質化競争となりがちで、そうなると価格競争となり、利益なきシェア拡大ということになってしまう。

戦略なしのシェア拡大は、シェアといっているだけで実態としては「売上志向」に他ならない。前年対比で何%売上をアップせよ、そのやり方は現場に任せる。結果を出してくれればよい、といった放任主義である。現場の奮闘努力で売上目標は達成するかもしれないが、利益は出にくい。

そんな会社の社長が「シェア志向は利益が下がる」と思い込んでいるのだ。正確には「戦略なき売上志向は利益が下がる」というべきである。

・売上志向:どこでも、誰でも、何でも売る。同質化し価格競争となり経費も増え、利益がでにくい

・シェア志向:どこの、誰に、何を売るのか、特定分野でシェアを拡大する
手ごわいライバルと棲み分け(差別化)し、強い分野をより強くする思想なので、競争力があり、利益がでやすい

ランチェスター戦略は「市場シェアの科学」と呼ばれるくらいの「シェア志向」だが、特定分野(地域、顧客層、商品)のシェアが利益をもたらすからである。しかも、短期的ではなく持続的な利益をもたらす。

地域×顧客層×商品=No.1 リフォーム会社の例

筆者(福永)はランチェスター戦略を指導原理に、「特定分野でNo.1でなることが企業の持続的な繁栄に最も有効である」と提唱している。そしてNo.1になることを企業に導入するコンサルティングを行っている。

特定分野とは、主に「地域」「顧客層」「商品」である。どこの、誰に、何を売るのかを絞り込んで(集中)、差別化した商品を(差別化)、顧客に密着した売り方で売り(接近戦)、No.1のシェアをとる方法を導入している。

キーワード化するとこうなる。

・差別化×接近戦×集中=No.1

・地域×顧客層×接近戦=No.1

たとえば小さなリフォーム店の場合。顧客がいればどこまででも工事に行っていれば売上は多少増えるが利益はあまり残らない。これが売上志向である。一方、重点地域を絞り込み、重点顧客層を絞り込み、重点商品を絞り込み、売っていくのがシェア志向である。

小さなリフォーム店が持家30,000世帯を対象にするとチラシを月に一回折りこむのがやっとではなかろうか。これでは有力なライバル店にはかなわない。しかし、3,000世帯未満に絞り込めば、どうだろうか。月に三回ポスティングできる。物量で圧倒できる。

そのチラシの内容で、顧客層を絞り込み、商品を絞り込んで訴求していく。そうすると「〇〇地域で、〇〇顧客層で、〇〇リフォームなら自社」というイメージが定着していく。受注した現場にはのぼり旗やシートをかけて自社が工事をしていることを地域の人に発信する。

それが需要を活性化する。リフォームは連鎖反応が起きやすい。近隣挨拶もしっかり行う。OB顧客への定期訪問も欠かさない。すると口コミが広がりやすくなる。見積依頼が増える。

地域で実績を積み重ねていれば指名受注が増える。相見積もりでも勝率が高くなる。近場に工事現場が集中すれば移動効率もよくなる。

つまり、「地域×顧客層×接近戦」を展開すれば、シェアが上がり、売上が増えて、粗利が増えて、営業利益が増える。黒字体質の企業になれる。

3,000世帯未満の狭い範囲であってもNo.1地域をつくれば、他社のチラシを見た人から自社へ問い合わせがくるようになる。ライバルはチラシをまいても反応が得られなくなるので、棲み分けが進む。さらに指名受注が増え、利益が増えていく。

シェアで利益を増やす方法とは特定分野(地域×顧客層×商品)でNo.1になることである。


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