2021年03月15日
前回の提言20「10%は有名無名の分岐点」に引き続き、今回の提言は「25%は強者の最低条件」について解説する。
ランチェスター戦略は「市場占有率(マーケット・シェア)の科学」といわれるほど、シェアを重視している。企業間競争の勝ち負けの判定基準が市場シェアだからだ。シェア1位を強者、2位以下を弱者と定義し、強者は「強者の戦略」、弱者は「弱者の戦略」をとる。これがランチェスター戦略の一丁目一番地である。
シェアは何%とると、どうなるのか。ライバルとの差がどれだけ開くとどうなるのか。といったことも理論化されている。他の理論にはない独自の理論である。
ランチェスター戦略では「7つのシンボル目標値」を定めているが、中小企業の社長に、どうしても覚えておいていただきたい数値は、10%、25%、40%、75%の4つである。正確な数字は図表で示したが、社長が覚えるのは四捨五入した数値でよいと思う。今回は「シェア25%が何を意味するか」について解説する。
市場シェア2位以下の弱者は、強者と同じようなやり方をしていても勝てない。弱者は強者をはじめ他社と差別化することで「質」の優位を築き、特定分野に集中することで「量」の優位を築き、顧客やユーザーや消費者とのコミュニケーションの「量と質」の優位を築くこと(接近戦)で勝ち残りを図る。
「質」の優位を築くことはどの企業にとっても大切なことである。
・新しい「売りモノ」
・新しい「売り値」
・新しい「売り方」
・新しい「売り文句」
・新しい「会社のあり方」
これらに挑戦すべきである。
シェアという「量」の少ない弱者は効果優先で、「質」の優位を築くことにチャレンジしづけなければならない。だが、これには当たりはずれがある。差別化しても顧客の支持が得られるかどうかは定かではない。たとえば、いまカップ麺は年間に1,500品目も発売しているが、そのうち定番化するのは3品目程度とのこと。大多数がはずれるのが現実だ。
したがって「量」の優位を築いている強者は当たりそうなやり方を模倣するほうが効率的である。これを強者のミート戦略という。そのほか、強者は「量」の優位性を活かしたやり方で効率よく勝つことで収益性と成長性を高める。そして、ダントツのナンバーワンを目指す。
ランチェスター戦略では市場1位の会社のことを強者と定義しているが、補足したいことがある。
1)市場シェアが25%未満は原則として強者の戦略はとれない
2)他社のシェアが不明な場合は25%を超えた1位を強者の目安とする
1位のシェアが25%未満の市場は、強者が存在しないオール弱者状態である。25%未満では市場全体への影響力は限定的であり、2位以下との差も乏しいからだ。大企業の場合は物量戦を展開することを否定しないが、25%未満は1位であっても差別化を基本としてもらいたい。
1位であってもシェアが10%未満という分散市場がある。住宅や不動産など地場産業が強く参入業者が多い業界などである。そのような分散市場の場合は特定の地域の特定の商品において25%を超えればダントツのナンバーワンと見なしても差し支えない。
自社のシェアは何とか試算できても他社がわからない場合。自社がおそらく1位で25%を超えていれば強者と見なしても差し支えない。
自社が大企業の場合は、25%未満であっても弱者であっても、マス広告などの「量」の豊富さを活かした物量戦を展開することは差し支えない。ただし、そのやり方は差別化しなければならない。
自社が中小企業の場合は、25%以上の強者であっても、経営資源は限定的である。ライバルよりも量が豊富である優位性は活かしていただきたいが、物量戦を展開する場合は身の丈に合わせること。
10%の次の目標値は25%である。市場の四分の一を確保したとき、強者の戦略を取り始めることができる。25%は強者の最低条件である。達成したら次は40%を目指す。