2021年03月08日
ランチェスター戦略は「市場占有率(マーケット・シェア)の科学」といわれるほど、シェアを重視している。企業間競争の勝ち負けの判定基準が市場シェアだからだ。シェア1位を強者、2位以下を弱者と定義し、強者は「強者の戦略」、弱者は「弱者の戦略」をとる。これがランチェスター戦略の一丁目一番地である。
シェアは何%とると、どうなるのか。ライバルとの差がどれだけ開くとどうなるのか。といったことも理論化されている。他の理論にはない独自の理論である。
ランチェスター戦略では「7つのシンボル目標値」を定めているが、中小企業の社長に、どうしても覚えておいていただきたい数値は、10%、25%、40%、75%の4つである。正確な数字は図表で示したが、社長が覚えるのは四捨五入した数値でよいと思う。今回は「シェアは10%が何を意味するか」について解説する。
無名な会社は信用されない。取引が不安である。まずは有名な会社にならなければならない。シェアが10%あれば、その地域のその業界にそんな会社があることは知られている状態である。まずは10%にならなければならない。10%は有名無名の分岐点である。
10%になるまでは投資期間と位置付けるべきである。10%を超えて有名になってはじめて黒字化するのが一般的だ。10%は黒字赤字の分岐点でもある。長年売っていても10%を超えない商品には競争力がない。安売りの対象となる。赤字なら見切ることを検討すべきだ。
法人営業の場合は、個々の顧客内シェアにおいても10%を意識してもらいたい。ランチェスター戦略では顧客内シェア5%未満はカバー率に反映させない。スポット的な取引、お試し的な取引に過ぎないからだ。顧客内シェアが5%を超えて、はじめて新規開拓が完了し、カバー率に含める。
だが、顧客内シェアもまた、10%になるまでは投資期間と位置付けるべきである。お試し価格で利益が乏しくても実績を積む時期だ。取引額や利益が少なくても、伸び代があるので営業活動の時間も投資する。この時間の人件費を顧客に割り当てたら、営業利益は赤字となるだろう。それでも投資期間として重視すべきだ。
ということは、新商品にしろ、新規顧客にしろ、新たに取り組む以上は必ず10%以上のシェアを取らなければ、やる意味がない。やる以上は必ず10%以上を目指さなければならない。そのためには経営規模の小さな会社は自社の身の丈に合わせて対象市場を小さく括っていただきたい。スモールマーケット・ビッグシェアの原則である。