2022年07月04日
ランチェスター戦略は特定市場でナンバー1のシェアをとることを目的としている。シェアは何%とったらどうなるのか、ライバルとの差がどれだけ開いたらどうなるのかといったシェア理論がある。市場シェアを判断基準に戦略を策定する。シェアの把握の方法、シェアアップの実戦体系がある。ランチェスター戦略が「市場シェアの科学」と呼ばれるゆえんである。
なぜ、シェアを重視するのか。それは特定市場でのシェアが高いと利益が増えるからである。シェアと利益が相関することはマーケティングの常識だった。ただし、シェアを求めるあまりに利益を失うことは現実には起こる。同質化競争の結果、消耗戦となるからだ。行き過ぎたシェア志向、戦略なき売上志向の弊害である。
シェアと利益は相関しないこともある現実を踏まえて、改めて統計的にはどうなのか。筆者はかつて仲間と調べた。その結果、次のことを統計で示すことができた。
・大企業の場合:シェア10%を超えたら、シェアと売上高営業利益率は相関する
・中小企業の場合:特定市場で高シェアの会社は一人当たり同業他社の3倍の営業利益がある
シェアが高いと利益が増えることは確かだった。では、なぜ、シェアが高いと利益が増えるのか。理由は2つある。
1つはコストダウン効果である。
シェアが高いとは特定市場での売上が他社より多いということだ。多くの仕事をしている。経験を積むことで従業員は習熟し、生産プロセスの効率が上がる。生産量が増大すると、単位あたりの材料や部品の仕入れコストが下がり、変動費が下がる。これを経験効果という。
同一製品の累積生産量が2倍になると、単位あたりのコストが20~30%下がる。経験曲線という。
生産量の増大は、変動費が下がるうえに、固定費も下がる。事業規模の拡大は単位あたりの固定費を下げる。事業規模の拡大に伴い変動費と固定費が下がることを規模の経済という。
コストダウン効果は製造業で顕著だが、サービス業も経験効果はある。
2つめは売上増である。
たとえばネットで本を買うならアマゾン、レストランを探すなら食べログ、ビジネスホテルを予約するなら楽天トラベル、と利用サービス業者は一つあればいいと考える人は多い。ウィナーテイクスオール(勝者総取り)という。
こうして高いシェアになるとコストは下がり、利益は増える。増えた利益を再投資して、よりよいサービスをローコストで提供すると、さらにシェアは高まり・・・と善の循環が起こり、一人勝ちがさらに進む。
ネットビジネスで顕著だが、そうでないビジネスでもその傾向はある。分散市場も時間の経過とともに弱肉強食が進み、最後は一人勝ちへと向かうものだ。
シェアを高めることは極めて重要である。そのためには投入する経営資源の「量」でライバルを上回る必要がある。経営規模が小さな会社が「量」で勝つには特定市場(地域や顧客層や商品)に集中する必要がある。
これがランチェスター戦略の目的である「特定市場でナンバー1のシェアをとること」である。