「ランチェスター戦略」は競争戦略のバイブル。企業間の営業・販売競争に勝ち残るための理論と実務の体系です。

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最新刊「小が大に勝つ逆転経営―社長のランチェスター戦略」。
【実録】弱者19社を業績向上させた中小企業の生き残り策。
日本経営合理化協会刊。社長専用のランチェスターの本です

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世界一わかりやすい「ランチェスター戦略」

はじめに

ランチェスター戦略とは、企業間の営業・販売競争に勝ち残るための理論と実務の体系です。

第一章ではランチェスター戦略の成り立ちと、その原点であるランチェスター法則に触れた上で、そこから導き出さ れた「弱者の戦略、強者の戦略」について解説します。

第二章では「市場シェア理論」と、その元となったクープマンモデルを、第三章では「ナンバーワン主義」をはじめとするランチェスター戦略の三つの結論を、そし て第四章では四つの実務体系についてダイジェストで解説します。

第1章 ランチェスター法則と弱者の戦略、強者の戦略

1.ランチェスター戦略を構築した故田岡信夫先生

1970 年代前半、オイルショックが起こり、それまでの高度経済成長期から一転して日本は不況となります。
市場縮小期に、企業はどうやって勝ち残るのか。
コンサルタントの草分けの故田岡信夫先生(1927 ~ 1984)は、 それまでのスピード勝負、体力勝負によらない、科学的・論理的な経営戦略・営業戦略が求められると考えました。
成熟市場で企業がいかにサバイバルするかを指導するのがランチェスター戦略です。
取り入れた企業は大 不況を乗り越え、今日も繁栄しています。
トヨタ、パナソニック、日本生命、武田薬品などの大企業、ソフトバンク、 エイチアイエス、フォーバルなど当時のベンチャー企業、そして多くの中小企業。
数多くの実績と、後進のコンサルタントやマーケッターへ多大な影響をもたらしたことから、ランチェスター戦略は日本において競争戦略・ 販売戦略のバイブルといわれています。

福永コメント
海外旅行総客数 1 位のエイチアイエスの創業者で現会長の澤田秀雄氏は、2015 年に、 志の高い若い経営者を養成する「澤田経営道場」を立ち上げました。
澤田氏は自らが創業時 に学んだランチェスター戦略を同道場の教育カリキュラムに取り入れます。私が講師をして います。
2.ランチェスター戦略の成り立ち

日本で生まれた競争戦略ですが、カタカナの名前がついているのは、「ランチェスター法則」という戦争理論が、その原点だからです。
ランチェスター法則は、イギリス人の航空工学の研究者F.W.ランチェスター (1868~1946)が第一次世界大戦のとき提唱した「戦闘の法則」です。
兵隊や戦闘機や戦車などの兵力数と武器の性能が戦闘力を決定づけるというものです。

ランチェスター法則は第二次世界大戦中、米国海軍作戦研究班で研究されます。
コロンビア大学の数学 教授B.O.クープマンらが応用し、「戦争の法則」に発展させます。
「クープマンモデル(ランチェスター戦 略方程式ともいう)」と呼ばれます。
戦争の作戦研究(オペレーションズ・リサーチ)は戦後、数学的・統 計的な意思決定の方法として研究され、産業界にも広く活用されています。

故田岡先生は 1962 年、社会統計学者の斧田大公望先生とクープマンモデルを解析し、市場シェアの3 大目標数値を導き出しました。
その後、研究と実務指導を重ね、1972 年に著書「ランチェスター販売戦略」を出版。ランチェスター戦略は普及していきます。

福永コメント
故田岡先生の遺志を受け継ぐのが特定非営利活動法人ランチェスター協会です。
私は同会で これを学び、1999 年にコンサルタント会社を創業。
ランチェスター戦略を指導原理にした「ラ ンチェスター戦略コンサルタント」として企業の戦略づくりとその推進をお手伝いしています。
同時に、同会では 2005 年に理事・研修部長(12 年常務)に就任し、後進のコンサルタ ントの育成にもあたっています。
3.勝ち負けのルール~ランチェスター法則

ランチェスター法則は戦闘の勝敗を示す軍事理論です。
軍隊の強さ・力を示す戦闘力は武器と兵力数で 決まるというものです。
武器は敵と味方の武器の性能や腕前を比率化した武器効率で捉えます。
敵の2倍の 性能の武器で戦えば味方の武器効率は2です。
敵が味方の2倍の腕前なら味方の武器効率は 0.5 です。
兵力数は兵士や戦車や戦闘機の数です。
物量です。
武器効率と兵力数を掛け合わせたものが軍隊の戦闘 力です。

法則は二つあります。
それは戦い方によるものです。

■ 勝ち負けのルール

4.ランチェスター第一法則

一対一が戦う一騎討ち戦、狭い範囲で(局地戦)、敵と近づいて戦う(接近戦)原始的な戦いの場合 は第一法則が適用します。
第一法則の結論は次の通りです。

戦闘力=武器効率 × 兵力数

実にシンプルな法則です。
同じ兵力数なら武器効率が高いほうが勝ち、同じ武器効率なら兵力数が多い ほうが勝ちます。
織田信長は鉄砲という最新兵器で勝ちました。
豊臣秀吉は常に敵の数倍の兵力数で勝ちました。
敵に勝つには敵を上回る武器か兵力数を用意すればよいのです。

5.ランチェスター第二法則

近代的な戦いの場合に適用するルールをランチェスター第二法則といいます。
集団が同時に複数の敵に攻撃をすることのできる近代兵器(確率兵器という)を使って戦う戦闘方法を確 率戦といいます。
第二法則が適用される戦闘は確率戦で、広い範囲で(広域戦)、敵と離れて戦う(遠隔戦) 場合です。
マシンガンを撃ち合う集団戦をイメージしてください。
第二法則の結論は次の通りです。

戦闘力=武器効率 × 兵力数の2乗

出てくる言葉は第一法則と同じです。
違いは兵力数が2乗となることです。
武器効率は変わりません。
確率戦は相乗効果をあげるから兵力数が2乗に作用するのです。

2乗とは 10 なら 100、100 なら 10,000 です。
とてつもなく大きくなります。
兵力が多いほうが圧倒的に有利です。
兵力の少ない軍は第二法則が適用する戦いでは勝つことは極めて困難です。

福永コメント

第一法則:戦闘力=武器効率×兵力数、第二法則:戦闘力=武器効率×兵力数の2乗は、それぞれの結論を示しています。
これには公式があり、公式を知れば、なぜ第二法則では2乗倍するのかが理解が深まります。
拙著ではどの本でも図版を入れて解説しています。たとえば、下記をご覧になるとよいでしょう。
世界一わかりやすいランチェスター戦略の授業 54ページと59ページ

そうはいっても、第二法則は本当に当てはまるのか? と感じる方もいらっしゃるでしょう。私は2015年7月、NHKのテレビ番組でこれを実証する実験を監修しました。ご興味あれば、下記の拙著でご確認ください。同書では実験結果より、織田信長の鉄砲隊はランチェスター第二法則の戦い方をしたことを提唱しています。
ランチェスターの法則で読み解く 真田三代 弱者の戦略 226ページ~233ページ

6.小が大に勝つ3原則

第一法則(一騎討ち戦、局地戦、接近戦)……戦闘力=武器効率×兵力数
第二法則(確率戦、広域戦、遠隔戦)……戦闘力=武器効率×兵力数の2乗

この二つの軍事法則から勝ち方の原則を導きだせます。
まず兵力数が多い軍は常に有利です。
特に第二法則が適用する戦いでは兵力数が2乗に作用しますから、圧倒的に有利です。

では、小が大に勝つにはどうすればよいでしょうか。
第二法則適用下の戦いでは歯が立ちません。
第一法則適用下であれば、武器効率を兵力の比以上に高めれば勝てます。
兵力数は増やせませんが、運用方法には工夫の余地があります。
局地戦に持ち込み、兵力を集中させれば、その局面においては兵力数をライバルよりも多くできます。
軍事用語で局所優勢といいます。
局所優勢の状況を維持して各個撃破していくのです。
つまり、ランチェスター法則から導き出される小が大に勝つ原則は以下の3つです。

①奇襲の原則(ランチェスター第一法則が適用する一騎討ち戦、局地戦、接近戦といったゲリラ戦で戦う)
②武器の原則(武器効率を兵力比以上に高める)
③集中の原則(局所優勢となるよう兵力を集中し、各個撃破する)

福永コメント

下記の拙著では、ランチェスター法則に加えて、「孫子の兵法」から小が大に勝つ原則を導き出しました。

①奇襲の原則、③集中の原則は一致しました。
孫子では②武器の原則は強調されていません(ただし、士気や勢いの重要性は強調されている)。
また、ランチェスター法則からは直接的には読みとれない④機動の原則を孫子では強調されています。風林火山ですね。

したがって、ランチェスター+孫子とすると、小が大に勝つ四原則となります。
①奇襲の原則、②武器の原則、③集中の原則、④機動の原則。
ランチェスターの法則で読み解く 真田三代 弱者の戦略 28ページ~38ページ

7.ランチェスター法則をビジネスに応用する

軍事理論のランチェスター法則を企業間競争に応用します。
戦闘力を、顧客を開拓し売上を上げ利益を確保する「営業力」と置き換えます。

第一法則(一騎討ち戦、局地戦、接近戦)……営業力=武器効率×兵力数
第二法則(確率戦、広域戦、遠隔戦)……営業力=武器効率×兵力数の2乗

まず、大きく捉えるなら武器は商品力、兵力は販売力です。
細かくは、情報力、技術開発力、品質や性能、ブランドなどの製品の付加価値、顧客対応力、営業パーソンのスキルなどの質的経営資源が武器です。
社員数、営業パーソン数、販売代理店の当社担当者数、製造現場の設備機器数、売り場面積、席数など、量的経営資源が兵力です。
これら質的経営資源と量的経営資源を掛け合わせたものが企業の営業力を決定づけます。

戦闘における第一、第二の法則はビジネスにどう応用できるでしょうか。
大きく捉えるなら、特定の商品、地域、販路、顧客層、顧客といった部分的な競争なら第一法則が適用し、総合的・全体的な競争なら第二法則が適用します。
総合的・全体的な競争の場合、量的経営資源が2乗のパワーとなることを意味します。
量的経営資源の乏しい(小さい会社、業界二番手以下の会社)は、部分的な競争に持ち込まなければ勝ち目はないということです。

福永コメント

私が「ランチェスター戦略コンサルタント」と名乗っているのは、このためです。
大手のコンサルティング会社と同じように総合的なメニューを打ち出しても太刀打ち困難です。
得意分野に絞り込んでいるから成り立つのです。
大手が百貨店型なら、当社は専門店(ブティック)型のコンサルティング会社です。

8.弱者の戦略、強者の戦略

ランチェスター法則が示す小が大に勝つ三つの原則から弱者の戦略が導き出されました。
弱者の基本戦略は「差別化戦略」です。武器効率を高めることです。
差別化とは商品をはじめ、会社、人材、情報、サービスの質的な独自性、優位性です。

兵力を集中することを「一点集中主義」といいます。
重点や集中という言葉も、一般によく使われていますが、ランチェスター戦略の場合は、兵力数の優位性から導かれています。
つまり、量的な優位性を築くために、自社の経営資源を重点配分することが勘所(かんどころ)です。

このほか第一法則的な部分的な戦い方「局地戦(地域や領域の限定)」「接近戦(顧客に接近する販売経路、営業活動、顧客志向)」「一騎討ち戦(競合数の少ない競争)」「陽動戦(奇襲戦法)」が弱者の戦略です。

一方、兵力数の多い企業は第二法則的な総合的な戦いを行えば、圧勝できることから強者の戦略が導き出されました。
強者の基本戦略を「ミート戦略」といいます。
弱者の差別化戦略を封じ込める意味です。同質化競争に持ち込めば武器効率が同等となるので兵力数で勝敗が決まります。
模倣、追随、二番手作戦などをミートと呼んでいます。

このほか第二法則的な総合的な戦い方「誘導戦(先手必勝のおびき出し作戦、新たな需要の創造)」、「確率戦(競合数の多い競争を重視、フルラインの品揃え、自社系列内競合など自社の力を重複化させる)」、「広域戦(地域や領域を限定せず拡大していく)」「遠隔戦(間接販売会社の力を活用、広告などの情報発信で顧客に接近する前に勝敗をつける)」、「総合主義(総合力で戦うこと)」が強者の戦略です。

福永コメント

弱者の戦略のなかで私が差別化、集中とともに重視しているのが接近戦です。顧客のニーズを把握し、自社の差別化された強みを合致させていく接近戦です。
そのため、顧客接点の量的・質的優位性を築く必要があります。
商品の差が見出しにくいほど、接近戦が決め手となってきます。

弱者の戦略、強者の戦略については事例を知ることと、ご自身の経験したことや見聞したことを分析することで理解が深まります。
どの拙著でも数多くの事例をあげておりますが、たとえば下記がお奨めです。

世界一わかりやすいランチェスター戦略の授業 *大企業の事例が多い
・ランチェスター戦略「小さなNo.1」企業 *中小企業の事例が多い

9.弱者と強者の定義

ランチェスター戦略は市場シェアを判断基準にして弱者と強者を定義づけます。
強者とは市場シェア1位企業であり、弱者とは2位以下のすべての企業を指します。

市場シェア1位の企業のみが強者です。
経営規模の大小ではありません。そして、この判断は競合局面ごとにします。
商品・地域・販売経路・客層・顧客の別に分析しなければなりません。
個々にみていく理由は、弱者と強者とではとるべき戦略が180度違うからです。

市場シェア情報も乏しく自分が弱者か強者かの見極めが困難な会社もあるでしょう。
迷ったら、弱者だと判断してください。
自社調べでは自社が実態以上に大きくなりがちです。
また成長してきた新興企業は数字上強者になっていたとしても、老舗企業の格やイメージが顧客や世間に残っていますので弱者の戦略をとるべきです。
強者は弱者の戦略をとっても成り立ちますが、弱者が強者の戦略をとるのは根本的な間違いを犯すことになることからも、「迷ったら弱者」です。

弱者・強者は市場シェアで判断します。市場シェアは何%とるべきなのか、他社との差は何を意味するのか、次の第2章で解説します。

第2章 クープマンモデルと市場シェアの科学



ランチェスター戦略は別名「市場占有率(マーケット・シェア、市場占拠率)の科学」といわれます。

シェアの理論は戦争の勝ち負けのルール「クープマンモデル」から導き出されたものです。

シェアの目標値を科学的に示した世界唯一の理論です。

1.なぜB29は戦略爆撃機といわれるのか

第二次世界大戦中、米軍は学者を徴用して作戦研究班(オペレーションズ・リサーチ・チーム=ORチーム)を編成し、戦争を科学的・数学的に研究しました。
コロンビア大学数学教授B.O.クープマンらはランチェスター法則に着目し、戦争の法則を数式化しました(クープマンモデル)。

ランチェスター法則は戦闘の法則です。
戦闘開始時の兵力数と武器性能により戦闘力が定まるというものです。
戦闘条件が終始変わらなければ問題ありません。
しかし、長期的な戦いとなると戦闘条件は時間の経過とともに変わります。兵力や武器弾薬、食料などの物資は生産され補給されます。
生産・補給の概念が戦争の勝敗に大きく影響するのです。

クープマンらは戦争力を敵軍と直接交戦する戦術力と、敵の生産・補給拠点を攻撃する戦略力とに区別して捉えます。
クープマンモデルは戦略力2、戦術力1の資源配分が最大の成果をあげることを導きます。
「戦略2:戦術1の原則」
といいます。戦術よりも戦略がより重要だということです。

米軍は重い爆弾を長距離運び、敵の生産・補給拠点を攻撃できる戦闘機B29を開発しました。
B29は戦術爆撃をする戦闘機ではありません。戦略爆撃機といわれる所以です。原爆を運び、爆撃したのもB29です。

対する日本軍は、真珠湾攻撃で敵の軍艦を多数撃破しましたが、軍需工場や燃料貯蔵庫などの生産・補給拠点にはほとんど手をつけませんでした。
このため米軍は軍艦を修理することができ、6カ月後のミッドウェー海戦で日本軍を破るに至るのです。

日本軍は戦術力を重視し、戦略力を軽視していたといわざるをえません。
南方戦線では敵の戦術攻撃で戦死する兵士より補給不足で餓死・病死する兵士のほうが多い始末でした。

福永コメント

戦略の失敗は戦術では取り返せない、と申します。戦略とは意思決定です。何をやるのか。目標を達成するためのシナリオと資源配分を決定することです。

戦術とは意思遂行です。どのようにやるか。戦略シナリオ実行の手段です。

2.市場シェアの目標値

1962年、故田岡先生は社会統計学者の斧田大公望先生と、クープマンモデルを解析して73.9%、41.7%、26.1%の市場シェア3大目標値を導き出しました(田岡・斧田シェア理論)。
後に故田岡先生は3大目標値の組合せから、19.3%、10.9%、6.8%、2.8%の4つを導き出し、市場シェア7つのシンボル目標数値を体系づけました。
これらは実務上キリのよい75%、40%、25%、などと覚えてもらっても差し支えありません。

現在のシェアの競争上の位置づけと、市場に対する影響力などの現状分析と、短期・中期・長期のシェアアップ目標を策定する際の基準値です。

福永コメント

斧田先生は「少年時代に戦争を経験した我々は、なぜ、日本はあんな悲惨な負け方をしたのか。この痛恨の極みを教訓としなければならない」という使命感で、これに取組んだと私に語られました。

クープマンモデルとはどういう数式で、そこから田岡・斧田両先生はどのように解析して73.9%、41.7%、26.1%を導き出したのか。
確認したい方は下記拙著をご覧ください。数式を示しています。
世界一わかりやすいランチェスター戦略の授業  118ページ〜123ページ

3.なぜ、敵を滅ぼさないのか? 〜73.9%上限目標値〜

73.9%を確保すれば、全ての競合他社を足しても26.1%にしかならず、約3倍の差をつけることができます。
いかなる戦いも終結させ、絶対的な一人勝ちできることから市場シェアの最終目標数値として位置づけられました。

大きな市場で一社が7割を超えるケースは、ハンバーガーチェーン市場におけるマクドナルド(75%)など、わずかしか存在しません。
大きな市場でシェア7割は独占禁止法の関係もあり、現実的な目標とはなりません。

しかし、ランチェスター戦略は市場を細分化し、個々の市場で競争地位別の戦い方をすることを指導原理にしています。
商品、地域、販売経路、客層、顧客と市場を細分化していけば独禁法の影響は受けません。

それに弱者はニッチ市場を狙うことも戦略です。
ニッチ市場で7割前後のシェアを誇る企業は数多くあります。
たとえば、お茶漬けの素の市場規模は全体で150億円弱。永谷園はその76%を占めています。2位は5%程度です。

それなら100%独占すればいいでしょうか。
一社独占は必ずしも成長性・収益性・安全性が高いとはいえません。
シェア100%はライバルがいない無競争です。市場が縮小し、成長性が高いとはいえません。
競争があるから各社、製品開発や営業活動などを行い需要が活性化され市場が拡大するのです。

次に収益性です。
シェア7割を超える会社は既に優良な顧客を確保し尽しています。
一般に需要規模が小さすぎる先、移動効率が悪い先などが残ります。
また、世の中には筆者のような判官びいき(弱者を応援する気風の持ち主)がいるものです。
そんなアンチ派にまで支持を広げるのに開発・販促・営業コストをかけるべきとは思えません。

100%独占は安全性が高いともいえません。
メーカーが材料や部品を調達する場合、1社からしか調達できないと、仕入れるメーカーにとってはリスクですから、代替品を探すのではないでしょうか。
その代替品によって市場そのものを失う恐れもあります。
また、ランチェスター戦略では弱者は一騎討ちで市場参入せよというセオリーがあります。
1社独占ならライバル1社ですから勝率五割。弱者の狙い目となってしまいます。

以上から、100%独占は決してよい状態とはいえません。
ライバルがいて、しかも強すぎず、束になってかかって来ても余裕で返り討ちにできる3倍のシェア差がある73.9%こそが、成長性・収益性・安全性が最も高まる上限の目標値となるのです。

4.首位独走の条件〜41.7%安定目標値〜

シンボル目標数値のなかで最も有名なのが41.7%安定目標値です。市場シェア40%は首位独走の条件です。

安定なら過半数の51%ではないかと思われるかもしれません。
2社間競合なら51%を獲得してもライバルが49%なので安定とは言えず、73.9%を確保しなければなりません。
しかし、全国区の総合的な競争では2社間競合は稀です。
多くの業界は5社以上の競合があるので、40%でまず間違いなくダントツになれます。

ダントツになれば成長性・収益性・安全性が高まります。
2位以下は消耗戦を仕掛けても太刀打ちできないので住み分けを意識するようになるからです。
40%を下回ると1位であってもダントツとはいえないケースが増えます。アサヒとキリンが38%前後で拮抗していることが典型例です。

福永コメント

シンボル目標値のなかで最も有名なのが41.7%(≒40%)です。

「シェアはみんなが考えている以上に大事です。40%を切るか切らないかでは、天と地ほどの差がある。40%は単に区切りの数字かもしれないが、経営には明確な旗が必要です。40%はひとつの旗、旗を掲げた以上、それを必ずなびかせなければならない」

「  」内は福永のコメントではなく、1995年、トヨタの社長に就任した直後の奥田碩さんのコメントです(出所:「トヨタ・ストラテジー」佐藤正明著)
5.首位独走の条件〜41.7%安定目標値〜

26.1%を確保すれば多くの場合、1位すなわち強者になります。
分散市場ではそれ以下であっても1位のケースもありますが、その多くの場合は2位とは僅差の1位ではないでしょうか。

いつ逆転されてもおかしくない状況では1位といっても強者の戦略がとれない場合が多いでしょう。
1位であればせめて26.1%は確保すべきです。
そこから26.1%下限目標値が定義されました。下限とは強者の最低条件という意味です。

26.1%以上を確保すれば、仮に残り全てが合併しても73.9%を下回ります。
その差は3倍未満です。これなら何とか生き残れます。
が、残り全てが合併して73.9%を上回ると、対抗できません。
26.1%は、どんなことがあろうとも生き残ることのできる競争地位を示します。

6.分散市場での四つの目標値~19.3%、10.9%、6.8%、2.8%~

以上の73.9%、41.7%、26.1%がクープマンモデルから直接導き出したシェアの三大目標値(田岡・斧田シェア理論)です。
後に、現実のシェア競争はもっと分散しているケースも多いこと、また、26.1%に到達するまでのマイルストーンが必要との実務上の要請から、故田岡先生が次の四つの目標値を付け加えました。

・19.3%(上位目標値)26.1%×73.9%と算出
19.3%(≒20%)を確保すれば、多くの場合上位3位以内に入れるでしょう。20%は弱者が当面の目標とすべき数字です。ここまで来れば1位の背中が見えてきます。戦略を1位獲得に転換します。分散型市場では1位のケースもありますが、極めて不安定です。

・10.9%(影響目標値)26.1%×41.7%と算出
新製品発売時の当面の目標になることから、俗に「10%足がかり」といいます。10.9%(≒10%)を確保すれば、市場全体に影響を及ぼす存在になります。10%未満では強者からすれば相手にする大きさではありません。10%を超えると、本格的な競争に突入するということです。

・6.8%(存在目標値)26.1%×26.1%と算出
6.8%(≒7%)を超えると、市場に存在が認められます。一方、影響を及ぼす力はないので本格的な競争には巻き込まれません。ひたすら自社製品の普及に取り組めばよい時期です。発売から時が流れても7%を超えないようなら勝ち目はありません。撤退の判断基準にも使われます。

・2.8%(拠点目標値)6.8%×41.7%と算出
2.8%(≒3%)は市場参入時に、参入できたか否かを判断する第一の判断基準です。3%→7%→10%が市場参入のマイルストーンです。10%を超えると本格的な競争に突入します。

・細分化して26.1%を目指せ
参入して時間が経過してもシェアが低い場合は、市場全体でシェアを上げていくことよりも、市場を細分化して、細分化したセグメント(部分市場)で26.1%の1位をとることを考えるべきです。商品、地域、販路、用途、顧客内シェアなど26.1%をとれそうになるまで細かくすることです。

26.1%の1位セグメントを一つずつ増やすことで、結果として全体を上げていくと考えます。
戦略とは狙い撃ち
なのです。ただし、全体で集計する必要もあります。四つの目標値は全体集計する際に使います。
福永コメント

73.9%、41.7%、26.1%の三大目標値のほかに私がよく使うのは10.9%(≒10%)です。
私は「有名・無名の分岐点」、「黒字・赤字の分岐点」と呼んでいます。
また、10.9%(≒10%)はシェアと利益の相関関係を調査した際に、転換点となる数値であることもわかりました。
詳しくは、下記の拙著でご確認ください。同書ではシェアが上がれば利益率が高まることを統計調査で確認しました。

7.射程距離理論 三:一(さんいち)の法則

ランチェスター戦略以外のシェア理論で役立つのが「相対市場シェア」概念です。
自社と最大のライバルとの比率のことです。
例えば自社が2位20%で1位が30%だと自社の相対シェアは0.67(30分の20)です。
自社が1位20%で2位が15%なら自社の相対シェアは1.33(15分の20)です。
同じ20%であってもライバルが何%であるかによって力関係は全く異なり、立てる戦略も変わります。
他社との差を分析する方法としてランチェスター戦略では三:一の法則(射程距離理論ともいう)があります。
上限目標値73.9%と下限目標値26.1%を足すと100%。
その比2.83≒3倍。2社間競合の場合、敵の3倍差をつければ勝敗は決することを示します。
常に三人一組で一人の敵と戦った赤穂浪士の討ち入りでも示された軍事上の常識です。

ただしこれは、ランチェスター第一法則適用下の場合です。
全国や地域のシェアなどは第二法則適用下なので、2乗して3倍になるルート3倍が射程距離となります。
約1.7倍
、5:3の比率です。

射程圏内か圏外かにより、上位に対しては逆転可能なのか当面は困難なのか、下位に対しては安全圏なのか、いつ逆転されてもおかしくない状況なのかを見極めます。
短期・中期・長期のシェアアップ目標設定に反映させます。

8.競争パターンの4類型

シェアの三大目標値と射程距離理論を掛け合わせると、同業者の競争パターンは次の四つに類型できます。

分散型 ①1、2位間、2、3位間などの上下の差がルート3以内、
②1位が下限目標値26.1%以下
3強型  ①1位が2、3位の合計以下で、1〜3位の差がルート3倍以内、
②1、2、3位の合計が73.9%以上
2強型  ①1、2位の差がルート3倍以内、②1、2位の合計が73.9%以上
1強型  ①1、2位の差がルート3倍以上、②1位が安定目標値41.7%以上

 

時間の経過とともに大手寡占化が進むのが世の常です。
一般に分散型→3強型→2強型→1強型と推移します。
現在の競争パターンを知ると近未来を予測できます。
現在3強型の3位なら、2強時代に負け組になる可能性が高いので、今のうちに2位を確保すべきです。
このようにシェア類型もシェアアップ目標を定めるときに意識します。成熟市場で大切なのは「敵」の設定です。

福永コメント

シェア争いの推移は次のような傾向を示すことがあります。
1位極大化、2位じり貧、3位漁夫の利・微増、4位以下脱落。
なぜ2位はじり貧するのか。
それについては第3章1にて。

第3章 ランチェスター戦略 三つの結論

 

1.勝ちやすきに勝つ~「足下(そっか)の敵」攻撃の原則〜

成熟市場において売上・利益・シェアを上げるには同業他社から顧客を奪うしかありません。
「どのライバルからでも、同業者はすべて敵なので、すべてから奪う」と考えては、確率戦となり体力が消耗するわりに得るものが少なくなります。
敵を定めて狙い撃ちすべきです。では、どの敵から奪うか。
答えは、足下の敵です。
足下とは1ランク下です。
自社が1位であれば2位、2位であれば3位です。
「足下の敵」攻撃の原則といい、ランチェスター戦略三つの結論の一つです。
 
・トヨタ、日産、ホンダのケース

自社よりも上を狙うのは危険です。第2章の8で2位はジリ貧と言いました。
かつての日産が衰退したのはトヨタに張り合い過ぎたことが最大の原因です。
張り合うとは同質化競争(ミート戦略)です。
武器効率が1になれば、兵力数で優る上位企業が有利です。

ランチェスター戦略では2位は弱者と定義していますが、一般に2位の企業は自社を弱者とは思っていません。
強者だと意識しているものです。
特に日産は名門企業でしたから、その意識は強いものでした。
しかし、弱者、強者は市場シェアの問題であって規模や歴史や格式は関係ありません。

裏を返せば、下位企業と同質化競争をすれば有利に戦えます。日産はホンダにミートすればよかったのです。

・大正、第一三共、武田のケース

市販の風邪薬市場のケースです。
05年、3位9.3%の武田薬品ベンザは「あなたの風邪に狙いを決めて」をキャッチコピーに発熱、のど、鼻の症状別に3種類の風邪薬を市場投入しました。
差別化戦略です。

これに対し2位13.3%の第一三共ルルは、長年使い続けたキャッチコピー「くしゃみ3回、ルル3錠」を「熱、のど、鼻にルルが効く」に変えました。
ベンザでは風邪薬代が3倍かかり、ルルなら一つで全部に効きます、という意味のコピーです。
弱者の差別化を無効にする、これもミート戦略です。

結果、06年、第一三共は14.4%にアップし、武田は9.5%と微増にとどまりました。
ちなみにダントツ1位の大正製薬は33%から29.5%にダウンしました。
3位の仕掛けに2位が封じ込め作戦で対抗し、1位が我関せずと動かなかった結果です。

自社よりも下位を叩くなら足下より、さらに下位のほうが叩きやすいですが、その間に足下が浮上してこないとは限りません。
射程距離が大切ですので、優先すべきは足下です。

ただし、いかなる場合も足下を叩けばよいということではありません。
伸び率、企業規模などを踏まえて応用してください。
大切なことは敵を絞ることです。
一方、頭上の敵に対しては、その動きを把握し差別化しなければなりません。

2.日本で2番目に高い山を知っていますか?~ナンバーワン主義~

日本で1番高い山が富士山であることを知らない人はいません。
では、2番目に高い山をあなたはご存知でしょうか? 
答えは南アルプスの北岳ですが、十人に一人も知りません。ご当地の山梨・長野にゆかりがあるか、山が好きな人に限られます。

1番と2番とでは埋めがたい大きな差があります。
ビジネスも同じです。
1番でなければなりません。
1番だけを強者といい、2番以下は弱者と呼ぶゆえんです。

ただし、1位といえども2位以下との差が少ない2強、3強、分散型という射程圏内にライバルがいる状況だと、不安定な1位です。
下位企業もなんとか逆転したいと挑戦し、激しい消耗戦が繰り広げられ、お互いに収益性が高まりません。

2位以下を射程圏外に引き離すダントツになったら、どうでしょうか。
2位以下はダントツと張り合っていたら体力的にもちません。
全面対決を避け、住み分けを意識します。戦いは終結に向かい、地位は安定し収益性は格段によくなります。

2位以下を射程圏外に引き離すダントツのことを、ランチェスター戦略では単なる1位と分けてナンバーワンと定義しています。
射程距離はルート3倍(約1.7倍)を標準とします。
2社間競合や客内の単品シェアのような局地戦の場合は3倍を適用します。

営業目標にゴールを設定するならば、それはナンバーワンのシェアです。

福永コメント

ナンバーワンと41.7%、1位と26.1%はおよそ相関しています。
1位が41.7%を超えると、7割以上の確率で2位をルート3倍以上引き離したナンバーワンとなります。
2位の8割は26.1%未満です。
つまり、41.7%≒ナンバーワン、26.1%≒1位です。これは統計結果です。確認したい方は下記拙著をご覧ください。

世界一わかりやすいランチェスター戦略の授業 126ページ~127ページ

3.弱者がナンバーワンになる方法 〜一点集中主義〜

いかにしてナンバーワンになるか。既に1位の強者は「足下の敵」攻撃の原則で2位を叩きます。
たとえば自社が1位でシェア30%、2位が25%だとすると、その差は5%です。
2位からシェア5%を奪い取れば、自社は35%にアップし、二位は20%にダウンします。
その差15%となり、ルート3倍の射程圏外です。ナンバーワンとなります。

では弱者はどうすればよいのか。
ナンバーワンなんて、弱者には夢のまた夢、と思うかもしれません。
確かに全体で勝つのは至難の技。一部分で勝つことを考えます。

特定の地域、販売経路、客層、顧客、そして商品。領域を細分化すれば既に1位の分野があるかもしれません。
1 位ではないが逆転可能な射程圏内に入っている分野なら、探せばきっとあるはず。
そこを狙うのが弱者のナンバーワンづくりです。
一点集中主義といいます。集中すべき分野を決め、どのライバルよりも量的経営資源を投入します。

ナンバーワン主義、「足下の敵」攻撃の原則、一点集中主義をランチェスター戦略三つの結論と呼びます。

福永コメント

規模は小さくても特定市場でナンバーワンのシェアをもつ会社「小さなナンバーワン企業」は同業者に比べておよそ三倍の収益性があることを統計調査でわかりました。 下記の拙著でご確認ください。
ランチェスター戦略「小さなNo.1」企業 46ページ~53ページ

以上がランチェスター戦略の基本理論です。
では、これを企業はどのように導入し、成果を上げていくのか。
第4章で、ランチェスター戦略の実務体系を解説します。

第4章 ランチェスター戦略の四つの実務体系

 

1.営業現場単位の戦略づくりに

ランチェスター戦略は大きな会社の本社の戦略スタッフが全社レベルの経営計画や販売戦略を立案する際にも使われますが、最もよく使われるのは営業現場単位での戦略づくりです。
世にある様ざまな戦略理論や経営手法は戦略は本社が考え、現場は実行するのみというものが多いようです。
これに対して、ランチェスターは顧客最前線の営業現場にこそ戦略が必要であるという考えです。

というのも弱者・強者、シェア順位は商品・地域・販路・顧客によって入れ替わります。
会社が大きいからといって強者とは限りません。
逆に小さいからといって必ずしも弱者ではありません。
営業現場単位で市場地位を見極め、地位に応じた戦略で戦うべきです。
同じ会社でも営業現場単位で戦略を切り替える必要があります。

70年代以降、多くの企業がランチェスター戦略を営業現場単位で取組んできました。
ランチェスター戦略が「ブランチ(支社・支店)の戦略」「汗の匂いのする戦略」ともいわれるゆえんです。

ランチェスター戦略の実務体系はメーカーや卸・販売会社の営業現場の「地域戦略→流通・シェアUP戦略→営業戦略」が最も多く取り組まれてきました。
小売など地域に根ざした店舗型サービス業は「地域戦略」中心に。
事業開発・商品開発部門では「市場参入戦略」に取り組んできました。
以下に各実務体系をダイジェストで解説しましょう。

2.市場参入戦略編

3以降で解説する地域戦略、流通・シェアUP戦略、営業戦略は既存事業を深耕していく実務体系で、成熟市場が前提となっています。
しかし、企業には市場導入期、成長期の事業もあります。
導入期・成長期では先発・後発によっても戦略が異なります。
この市場時期別の戦略の体系が市場参入戦略編です。
商品開発、市場開拓、新規事業などの経営レベルの実務です。

福永コメント

地域戦略、流通・シェアUP戦略、営業戦略は営業部門向けのものですが、市場参入戦略は経営者、企画・マーケティング部門向けのものです。
先の長い若い経営者にはぜひ、学んでいただきたいです。
そんな中小企業経営者に読んでいただきたいのは下記です。
私のお手伝い先も含めて45社の事例が出ています。
・ランチェスター戦略「小さなNo.1」企業

市場参入戦略編が充実しているのが下記の拙著です。
大きな会社のスタッフ部門の方にお奨め。大企業の中期経営計画づくりをケーススタディしている本です。
世界一わかりやすいランチェスター戦略の授業 146ページ~

3.地域戦略

地域戦略は営業地域(メーカー・卸のテリトリー、店舗の商圏)を細分化し、重点化し、シェアナンバーワン地域をつくっていく実務です。
地域全体での市場地位に応じて重点地域の選択基準が異なることが勘所(かんどころ)です。
市場規模、市場シェア、人口、世帯数など、地域を定量的にみるのみならず、地域特性(点・線・面、うちもの・そともの、など)を定性的にとらえる独自のノウハウが充実しています。

ランチェスター戦略の原点は軍事戦略理論。
戦争とは地域の奪い合いです。
この原点との親和性が高く適用事例も多い。
ターゲット地域を決定する “ランチェスターの華”といえる実務です。

福永コメント

地域に根ざしたビジネスなら地図づくりは必須。
ゲーム感覚でビジネスが楽しみます。
私もこれでランチェスター戦略にはまりました。

4.流通・シェアUP戦略編

流通・シェアUP戦略は販売チャネルをとらえて、営業活動でいかにシェアを上げていくのかの実務です。
間接販売(販売会社を通じてユーザー・消費者に販売する)の場合は、代理店・特約店戦略。
間接販売の場合はチャネルとユーザー、直接販売の場合はユーザーの需要規模と顧客内シェアから顧客を戦略的に格付ける「ランチェスター式ABC分析」を行います。
また、カバー率Aa率(大口需要先のなかでの自社メイン先の割合)からシェアUPのシナリオを導く「構造シェア」という概念もあります。
ターゲット顧客を決定する“ランチェスターの要(かなめ)といえる実務です。

福永コメント

シェア30%を来期35%にしたいとき、あと5%多く働け、といっても達成しませんね。
Aa候補先や新規開拓先を固有名詞であげないと現場で役立つ戦略は作れません。
ランチェスター戦略が構築されて40年以上が過ぎた今日も、多くの営業現場が取り入れているのは、この実務体系があるからに他なりません。
これを実行せずして、ランチェスター戦略を知っているとは言い難いと思います。

5.営業戦略編

営業リーダーが営業チームを、あるいは営業パーソンが自分自身をいかにマネジメントしていくのかの実務です。
スキルやモチベーションなどの戦術レベルよりも、顧客別の営業の方針や商談の頻度などを最適化していく戦略レベルに重点を置いています。
ルートセールス型、案件セールス型、新規開拓など営業方法別の営業マネジメントの勘所(かんどころ)をおさえます。
決めたターゲットをいかに攻略するのか、“ランチェスターの実(み)といえる実務です。

福永コメント

あなたの会社の営業担当者は、行くべき顧客に行くべき時に、行くべき頻度で訪問していますか? 
行きやすいところ(私は「オアシス客」と呼んでいます)ばかりに行っている人が実に多いです。
適正な活動の基準値をつくりプロセスを管理しましょう。

①地域戦略、②流通・シェアUP戦略、③営業戦略の実務体系を解説しているのが下記の拙著です。
同書では営業パーソンの時間の使い方を統計分析した結果も示しています。営業部門の方に、この本をお奨めしたい。
「営業」で勝つ!ランチェスター戦略 111ページ~201ページ

以上、ランチェスター戦略の理論と実務の体系をダイジェストで解説しました。

【福永まとめのコメント】

*ランチェスター戦略推進のポイント1 差別化×集中×接近戦=ナンバーワン

自社の強み・魅力・個性を棚卸し、競合他社に対して独自性・優位性のレベルにまで磨き上げる(差別化)。
その際、何で勝負をするのかを見極めることが勘所。
事業を成功に導く一番大切なことは何か。
それは顧客・見込客の潜在ニーズを知ることでわかる(接近戦)。

そうして決めた一点に集中(一点集中主義)。
それをいかにして顧客・見込客・潜在客に伝えるか(接近戦)。
その結果、ダントツの支持をえて、企業を持続的な繁栄に導く(ナンバーワン主義)。
このシナリオ(ストーリー)を描くことです。

*ランチェスター戦略推進のポイント2 シェアの把握方法と、シェアアップの実務

ナンバーワンとは市場シェアがダントツということ。
シェアというと、わからないという方や、軽視する方が多いです。
シェアとは顧客の支持率
と考えれば、わかりやすいし、重視しなければならないことは理解いただけるでしょう。
私のコンサルティング経験でも、私たちの調査でも、シェアは企業の利益と相関する(シェアが高ければ利益率が高まる)ことは明らかです。

シェアがわからなければ、わかる方法があります。
詳細に正確にわからなくても、おおよそわかれば、戦略は立ちます。
何とかなります。そして、おおよそわかったシェアを上げながら、情報の精度を上げていく営業の実務指導(売りながら調べ、調べながら売る)が、私がいちばんたくさんやってきた仕事で、好きで得意です。


謝辞

ランチェスター販売戦略は、昭和45年に故田岡信夫先生がランチェスターの戦争の法則から初めて導き出したビジネスの戦略思想です。
「勝ち方には一定のルールがある、その基本的思想をランチェスター法則から学び取れ」が先生の一貫した主張でした。
そして先生は、ランチェスター法則をすべての戦略哲学の中核に据え、複眼的で弁証法的な発想と、知的な論理の展開法を重視し、今日のランチェスター販売戦略の全体系を築きあげました。
私(福永雅文)は本文を執筆するに当たって先生の先駆的業績に敬意を払い、ここに衷心より感謝の意を表明します。


お問い合わせや、ご相談があれば、お気軽にメールください。福永本人が回答します。 
info@sengoku.biz

 

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いま、なぜ、ランチェスター戦略なのか

1.あなたの会社に戦略はあるか?

以上の5つのチェックリストの該当するものに、してみてください。

一つでも印がつけられないのならば、以降の文をお読みになることをお奨めします。

できないということは、あなたの会社に戦略がないか、正しくないか、機能していないということです。
戦略をもたずして、この大競争時代を勝ち残ることは困難です。

そのような会社は一般に業績が振るいません。
業績がよいとしても、先人の遺産のおかげか、偶然だと思います。
再現性に欠けますので、いつまでも好業績は続きません。

業績不振の会社は、その不振の理由を他人のせいにしがちです。
需要が縮小している、景気が悪い、規模が小さい、誰それが悪い、天気が悪い・・・。
こういうのを責任他人論といいます。
そんなことを言っていても業績は向上しませんよね。

私(福永)はこう考えるべきと思います。

業績格差は戦略格差である。

戦略の優劣、戦略のPDCAの徹底度合いが、企業の業績を決めるのです。
戦略を学び、わが社の戦略づくりに活かしていく必要性があります。

2.戦略の原理原則を知ろう

「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」とは鉄血宰相ビスマルクの名言です。
歴史の積み重ね――歴史上の人物たちの大いなる成功体験、とんでもない失敗体験――は、智恵となり、教訓といわれ、やがて、原理原則として、確立します。

・昔は通用したが、いまは通用しない
・他社では通用したが、わが社では通用しない

こういったものは原理原則ではありません。
いつ、いかなる時も、いかなる場合でも通用するのが原理原則です。
知っていようが、いまいが、多くの場合に当てはまるのが原理原則です。

囲碁や将棋やチェスには定石(定跡)というものがあります。
先人の研究により確立された最善の打ち手のことです。
転じて、物事を行うときの最善の方法や手順という意味で広く使われています。
いわば勝ちパターンです。
ビジネス戦略にも定石があり、ランチェスター戦略は「戦略定石」といわれています。

一方で、古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスは「万物は流転する」といい、釈迦は「諸行無常」を唱えました。
世の中は常に変化するので絶対ということはないという意味です。
ビジネスにおける意思決定はケースバイケースにゼロベースでするべきとの考えもあります。

さて、あなたは、どちらが正しいと思いますか? 
どちらかに をつけてみましょう。

私(福永)は、世の中に絶対ということはないが、原理原則は知っておいたほうがよいと考えます。
天才や、よほどの達人でなければ、自己流は辞めたほうがよいです。
経験と勘と度胸よりも、原理原則のほうが勝率は高い。
天才といわれる織田信長もやったことを後講釈すると、原理原則に則っています。
ピカソは基礎的な写実的な画風を経て、奇抜な画風に到っています。天才ですら、そうなのです。
経営や営業マネジメントに係わる人は、経営戦略・販売戦略の原理原則、定石を知っておくべきです。
知った上で、ときに原則を超えた意思決定をすることも視野に入れておけばよいのです。

3.経営戦略・販売戦略の原理原則には、どんなものがあり、どう学ぶか

「戦略定石」や「販売戦略のバイブル」といわれるランチェスター戦略のその専門家である私(福永)は、数ある経営戦略・販売戦略理論のなかで、これを推奨していますが、ランチェスター戦略だけが正しくて、他は不要と思っているわけではありません。
むしろ逆で、ピーター・ドラッカーにマネジメントを学ぶべきだし、フィリップ・コトラーにマーケティングを、マイケル・ポーターに競争戦略を学ぶべきと考えます。


経営戦略・販売戦略に課題を感じている方にお伝えしたいことは、世の中に、経営戦略・販売戦略の代表的な定説にどんなものがあるのか、ざっと調べて全体像を把握することをお奨めします。
とりあえず、ランチェスター、ドラッカー、コトラー、ポーターあたりから始めましょう。
そして、比較してみてください。自社・自分に一番合いそうなものを選んでください。

選んだら、その一つの理論体系を習得します。
あれこれと広く薄く学ぶよりも、一つに集中することが大切です。
広く薄く学ぶと底の浅い理解に留まり、実践で使うと危険ですから。「生兵法はケガのもと」と、昔からいいます。
一つに絞れば深く理解できますから、実践で使えるようになります。

なかなか一つに絞れないという方、安心してください。
どれを選んでも、大切なことは共通しています。
まず、一つを本やセミナー、研修などでマスターした上で、拡げていくと既に学びとっている部分がありますので、早く習得できるようになります。
下記の拙著で、ランチェスター戦略と、コトラー、ポーター、ビジョナリー・カンパニー理論、ブルー・オーシャン理論の共通点と違う点を整理していますので、ご参考まで。
世界一わかりやすいランチェスター戦略の授業 99~108ページ

4.ランチェスター戦略をお奨めする三つの理由

数ある経営戦略・販売戦略のなかで、ランチェスター戦略をお奨めする理由は三つあります。


第一に、わかりやすいことです。
これほどわかりやすい理論は他にないと思います。
世界一わかりやすい「ランチェスター戦略」』のページをご覧ください。
文字通り10分でざっと目を通すことができます。数値目標もはっきりしています。

内容的には、小が大に勝つ、弱者逆転することに力点が置かれています。
大が小に勝つのは当たり前。
でも、やり方次第で小であっても大に勝てる。
この戦略の醍醐味を「弱者の戦略」として理論化しています。
ですから、経営規模の大小を問わず、活用できます。

第二に、実務的なことです。
理論はわかっても、それをどのように実務で使うのかが、他の理論は充分に体系化できていないように感じます。
経営スタッフは理解しても、営業現場で使えなければ、あまり意味がないのではないでしょうか。

第三に、実績が豊富にあることです。
経営規模を問わず、業種・業態を問わず、これを学び、自社の戦略に取り入れてきた会社は数多くあります。
そして、そのことは過去の話ではなく、現在も、です。当社の業務実績を見ていただければ、ご理解いただけると思います。

以上が、お奨めする三つの理由です。
一方で、ランチェスター戦略についての偏見や誤解があるのも事実です。
そのことも、正直にお伝えします。

1.戦争のイメージがある
2.古くて、泥臭い
3.(これは誤解ですが)中小企業向けで、大企業が取り組むものではない

第一の戦争のイメージがあることは確かです。
原点が「ランチェスター法則」という軍事理論で、軍事用語を経営用語に置き換えている部分があります。
しかし、軍事理論は、その原点に過ぎません。
ランチェスター戦略は日本人コンサルタントの故田岡信夫先生が確立した経営・販売・競争の戦略理論です。
戦争の勝ち方を指導するものではありません。
まして、戦争を美化するつもりは毛頭ありません。
ただし、経営と戦争には一点において共通することがあります。
それは、負けたら悲惨がまっているということです。
その意味で「ビジネスは戦である」と私(福永)は思っており、黒田官兵衛や真田幸村に学ぶ趣旨の本も書いております。
ですが、そのことは戦争を美化する意味ではありませんので、ご安心ください。

第二の古くて泥臭いのは確かです。
戦術テクニックや手法は日進月歩で古びますが、ランチェスター戦略は骨太の戦略論です。
定石、原理原則は普遍の真理なので、古いとか新しいといった次元ではないと思います。
聖書や孫子を古いというでしょうか。

また、長い歳月を使い続けられているということは実績が豊富ということです。
古いといっても、過去のものではなく、いまも、多くの企業が取り組んでいます。
当社の業務実績をご参照ください。
また、1970年代に確立された当時のママで、いまも通用するはずがありません。
原理原則は守りつつ、最新の経営理論の知見や、経営手法のノウハウを現役コンサルタントの私たちが取り入れ、進化させています。
ご安心ください。

泥臭い、「汗の匂いがする」ともいわれますが、むしろ褒め言葉と受け止めます。
営業現場で使える実務体系という意味ですから。
実務で使えることこそ、ランチェスター戦略の真骨頂なのです。

第三の中小企業向けというのは完全な誤解です。
当社は年商が兆単位の大手総合商社や総合メーカー、世界最大級の外資系医薬品メーカーなどの業務実績が豊富にあります。
中小企業の業務実績も豊富にあります。
経営規模、業種、業態を超えて活用できるのがランチェスター戦略です。

それなのに、中小企業向けであるとの誤解があるのは、

①中小企業も使える理論は数少なく、その代表的な存在であること、②中小・零細企業に特化したランチェスター戦略の専門家が何人かいらっしゃること、なのかと感じます。
中小企業に向いていることは確かですが、中小企業専用の理論ではありませんので、誤解なさらないでください。

以上、ランチェスター戦略をお奨めする理由と、誤解や偏見に対する見解を記しました。
選ぶのは、もちろん、あなたです。
このパートでは、あなたの会社を左右する重要な、とても重要な戦略を学ぶ意味や、学び方を解説しました。
その候補の一つとしてランチェスター戦略も検討しようということなら、よろしかったら、世界一わかりやすい「ランチェスター戦略」のページで、大づかみなさってください。

ランチェスター戦略のルーツ

F・W・ランチェスター(人物)について

F_W_LanchesterF・W・ランチェスター

第一次世界大戦の頃、イギリス人のエンジニアF・W・ランチェスターは戦闘機の開発に従事していました。彼は自分が開発した戦闘機が戦闘でいかなる成果をあげるのかに興味を持ちます。研究した結果、兵力数と武器性能が一軍の戦闘力となり、敵軍に与える損害量を決めることを発見します。これがランチェスター法則です。第一・第二の二つから成り立ちます。このランチェスター法則がランチェスター戦略の原点です。
第二次世界大戦のとき、アメリカ軍はランチェスター法則を応用し、戦闘力を敵軍と戦う直接的な力と、敵軍の後方を攻撃し敵が戦争をすることを困難にする間接的な力に分けてとらえます。コロンビア大学の数学教授であったB・O・クープマンらがオペレーションズ・リサーチ(OR=作戦研究)チームを作り、導きだしましたことからクープマンモデルといいます。

戦後、ORは産業界へ応用されていきます。フォルクスワーゲン社がカナダに進出した際にも使われたといわれています。

理論と実務として体系化した田岡信夫先生

故田岡信夫先生故田岡信夫先生

日本ではコンサルタントの故田岡信夫先生が、これを研究し販売競争に勝つための理論と実務として体系化しました。1970年代以降、多くの企業がこれを学び応用して取り入れ実戦し勝ち残っていきました。

多くの戦略理論や経営手法がアメリカ生まれであるのに対してランチェスター戦略は原点こそ欧米ですが、ビジネス戦略として体系化づけられたのは日本です。日本発ということと多くの企業が導入してきたこと、コンサルタントやマーケッターが多かれ少なかれ、この理論の影響を受けてきていることから「販売戦略のバイブル」ともいわれます。

ランチェスター戦略とはランチェスター法則、クープマンモデルをベースに故田岡信夫先生が構築した販売戦略、競争戦略です。イギリスで生まれ、アメリカで育ち、日本でビジネス戦略として花開いたものです。

田岡先生の遺志を受け継ぐ特定非営利活動法人ランチェスター協会と弊社

田岡先生没後、先生の遺志を受け継ぐ特定非営利活動法人ランチェスター協会が設立されました。弊社代表の福永雅文は同会で学び、2005年以降、同協会常務理事・研修部長として同会の講座やテキストの責任者を務めています。同会認定インストラクターの育成も行っています。弊社(戦国マーケティング株式会社)は同会の公認のもと、ランチェスター戦略を基盤としたコンサルティング業務、研修、講演、著述活動を行っています。

 



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