ランチェスターの法則、ランチェスター戦略の理論とは。ランチェスター戦略コンサルタント・福永雅文が、わかりやすく解説します

ランチェスターの法則、センチェスター戦略の戦国マーケティング

ランチェスター戦略を伝道する福永雅文の公式サイト

会社概要お問合わせ      

ランチェスター戦略の理論


(1)ランチェスター戦略
(2)ランチェスター法則
(3)クープマンモデル
(4)田岡・斧田シェア理論
(5)弱者と強者
(6)弱者の戦略
(7)差別化戦略
(8)強者の戦略
(9)シェア7つのシンボル目標数値
(10)射程距離理論
(11)シェアの類型と推移

(1)ランチェスター戦略

競争戦略の理論と実務体系。
ランチェスター法則をはじめクープマンモデル、田岡・斧田シェア理論等を基にマーケティング・コンサルタントの故田岡信夫先生(1927~1984)が構築。

1972年、「ランチェスター戦略入門」を著して以降、多くの企業がこれを学び、自社の戦略に取り入れた。軍事理論のランチェスター法則を戦略思想に据え、経営に応用したことからランチェスター戦略と呼ばれるが、体系づけたのは故田岡先生である。

「田岡理論」「田岡式販売戦略」などと呼ぶほうが誤解がない。
日本オリジナルであり、我が国の競争戦略のバイブルといわれる。市場シェアを判断基準にし、市場地位別の戦い方を指導原理にしている。



▲TOPに戻る

(2)ランチェスター法則

イギリス人の航空工学エンジニアのF.W.ランチェスターが発見した軍事理論。
1916年、著された「戦争における航空機 Aircraft in Warfare」で普及。

武器と兵力数が戦闘力を定め、敵に与える損害量を決定づける。
一騎討ちの第一法則では「戦闘力=武器効率(敵味方の武器性能を比率化したもの)×兵力数」。確率戦の第二法則では「戦闘力=武器効率×兵力数の2乗」。
後に第一法則から弱者の戦略が、第二法則から強者の戦略が導き出された。



▲TOPに戻る

(3)クープマンモデル

第二次世界大戦のとき、米軍は学者を徴用して作戦研究班を編成し、戦争を科学的・数学的に研究させた。
コロンビア大学の数学教授B・O・クープマンらはランチェスター法則に着眼し、これを研究し軍事シミュレーションモデルを開発した。

これをクープマンモデルという。戦力を直接的な戦闘力「戦術力」と、敵軍の後方にある敵国の軍事基地、軍需工場、物資や燃料の補給拠点などを攻撃し敵軍の戦争継続を困難にしてしまう間接的な戦闘力「戦略力」に分ける。

そして、その比率を戦術力1:戦略力2にする時、最も戦力が高まることを方程式で示した。ランチェスター法則をもとに開発されたことからランチェスター戦略方程式またはランチェスター戦略モデル式と呼ばれてきた。

しかし、これでは誤解を招き、ランチェスター第三法則などといわれることもあるので、クープマンモデルと呼ぶ。
なお、作戦研究(オペレーションズ・リサーチ)は戦後、数学的・統計的な意思決定の方法として学問的に研究され産業界にも広く活用されている。



▲TOPに戻る

(4)田岡・斧田シェア理論

故田岡先生と社会統計学者の斧田太公望先生が1962年、クープマンモデルを解析し導き出した市場シェア3大目標数値。

73.9%上限目標値。41.7%安定目標値。26.1%下限目標値。

クープマン目標値とも呼ばれるが、開発したのは田岡・斧田両先生であり、誤解を招くので3大目標数値を田岡・斧田理論と呼ぶ。
この発見から10年後、(2~4)等の研究を重ね、故田岡先生が販売競争戦略の理論と実務体系としてランチェスター戦略を発表するに到る。なお、(1~4)の共通言語の整理・再定義は08年11月24日に開催されたランチェスター戦略学会で著者が発表報告したものである。



▲TOPに戻る

(5)弱者と強者

市場シェア1位の企業を強者、それ以外をすべて弱者と呼ぶ。

競合局面ごとに判断する。 地域・顧客・販路・商品の別に異なる。経営規模ではないので大企業の弱者、小企業の強者もある。局面ごとに判断する理由は弱者と強者とでは戦略が180度異なるから。



▲TOPに戻る

(6)弱者の戦略

ランチェスター第一法則「戦闘力=武器効率×兵力数」から導き出された。

兵力数を増やすことは容易ではないが、限られた兵力を集中することにより、その局面での兵力優位の状況を作り出すことはできる。
これを「一点集中主義」という。
武器効率を上げることを「差別化」という。弱者の基本戦略である。
そのほか、局地戦(地域やビジネス領域の限定)、接近戦(顧客に近づくチャネル戦略・営業活動)、一騎討ち戦(競合数の少ない戦い)、陽動戦(敵の裏をかく奇襲戦法)などが挙げられる。



▲TOPに戻る

(7)差別化戦略

弱者の基本戦略。

差別化はマーケティングの4P(Products=商品、Price=価格、Place=販売経路、Promotion=販促)を基本に考える。筆者は、(1)マーケット(①事業領域、②客層)、(2)製品・サービス(①製品の性能、②製品の売り方・用途・見た目、③サービス)、(3)価格、(4)流通(販売経路)、(5)地域、(6)販促(①広報・情報発信・ブランディング、②広告・販促)、(7)営業(①営業方法、②顧客満足・ソリューション)、(8)理念、の各分野で取り組み、それを3つ程度の切り口で訴求することを提唱している。



▲TOPに戻る

(8)強者の戦略

ランチェスター第二法則「戦闘力=武器効率×兵力数の2乗」から導き出された。

兵力数が2乗になると弱者を圧倒できるので総合力を活かした集団戦・組織戦で戦う。
「総合主義」という。武器効率を同等にすれば兵力数で勝敗が決することから弱者の差別化を封じ込める「ミート(同質化・模倣・二番手)戦略」が基本戦略となる。
そのほか、広域戦(地域やビジネス領域の拡大)、遠隔戦(ディーラーの力をフル活用、情報発信によるプル型プロモーション、空中戦)、確率戦(自社の力を重複化し弱者のつけ入る隙をなくすフルライン戦略、自社系列内競合)、誘導戦(先手必勝のおびき出し作戦)などが挙げられる。



▲TOPに戻る

(9)シェア7つのシンボル目標数値

クープマンモデル(3)から導き出された田岡・斧田シェア理論(4)
「73.9%上限目標値。41.7%安定目標値。26.1%下限目標値」
の市場シェア3大目標数値だけでは分散型市場では対応できないことから
26.1%×73.9%=19.3%上位目標値、26.1%×41.7%=10.9%影響目標値、26.1%×26.1%=6.8%存在目標値、6.8%×41.7%=2.8%拠点目標値の4つを導き出し、故田岡先生が全体で7つの市場シェア目標値を体系化した。

この活用は第一に現在地を確認すること。第二に短期・中期・長期の目標づくりの判断基準にする。
40%はシェア目標の天王山といわれ、トヨタ、日本生命など多くの企業がこれを意識している。
40%を超えると多くの場合、2位を射程圏外に引き離す。



▲TOPに戻る

(10)射程距離理論

敵味方のシェア差がどこまで開けば競争戦略上、逆転が困難になるのかを示す。

ランチェスター第一法則が適用される客内の単品シェアの場合は3倍、それ以外は第二法則的であるので2乗して3倍になる√3倍(約1.7倍)差を射程距離という。
1位シェアが50%、2位シェアが30%のような5:3が射程距離。上限目標値73.9%と下限目標値26.1%がの合計が100%であり、その比が約3対1であることから導き出された。



▲TOPに戻る

(11)シェアの類型と推移

各社のシェア差からそのパターンを類型化する。

・分散型(1位が26.1%以下で、1・2位間、2・3位間などの各上下の差が√3倍以内)
・3強型(1位・2位・3位の合計が73.9%以上で、1位が2位+3位の合計以下で、1位~3位の差が√3倍以内)
・2強型(1位・2位の合計が73.9%以上で、1位・2位の差が√3倍以内)
・一人勝ち型(1位が41.7%以上で、1位・2位の差が√3以上)

の4類型。時間の経過とともに勝ち組の数が減り大手寡占、弱小の淘汰が進む。したがって現在の競争パターンを知ることで今後の傾向を予測できる。
それを踏まえた順位とシェア目標を定めることに活用する。
特に大切なことは敵の設定。
どのライバルから売上・顧客を奪うのかは(14)で。シェアの今後の推移には次のような一般的な傾向がある。
1位極大化、2位ジリ貧、3位漁夫の利・微増、4位以下脱落。シェアの推移という。2位が弱者であると定義する裏づけのひとつ。

▲TOPに戻る

さらにランチェスターを知りたい方へ