ランチェスター法則とは。ランチェスター戦略コンサルタントが解説。


提言37 ランチェスター戦略の3つの差別化ポイント

2021年07月12日 


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戦国三英傑といえば、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康である。世界三大美人はクレオパトラ、楊貴妃、小野小町である。世界三大珍味がフォアグラ、キャビア、トリュフである。

世の中には「三大〇〇」がたくさんある。なぜか? 言いやすく、覚えやすいからだ。一つか二つのほうがもっと覚えやすいが、言い足らなさ、聞き足らなさを感じるのだろう。四つ以上になると多すぎる。三つがおさまりがよい。

たとえば、賤ケ岳七本槍(賤ケ岳の戦いで活躍した秀吉の親衛隊)は歴史に詳しい人でも全員は云えない。加藤清正と福島正則は出てくるが、あと一人がなかなか出てこない。武田二十四将(信玄に仕えた有力武将)となるとお手上げだ。山本勘助は出てくるが、実在が不確かな人物。有名な真田昌幸は信玄の時代は若手なので二十四将には含まれない。

自社製品の差別化ポイントなど、伝えたいことは3つに絞ろう。3つにまとめよう。そうすることで、メッセージが強くなる。情報発信するときにも、営業員がアプローチするときも有効である。

ランチェスター戦略の3つの差別化ポイント

例として、経営戦略の理論や手法が数多くあるなかで、ランチェスター戦略はどのような特徴があるのか、差別化ポイントを3つ挙げてみよう。

ランチェスター戦略は第1に「科学的」である。第2に「実務的」である。そして、第3に「豊富な実績」がある。

ランチェスター戦略は、ランチェスター法則とクープマンモデルの、方程式で示される二つの軍事理論がルーツである。この方程式を日本のコンサルタントの草分けの故田岡信夫先生と、そのパートナーで統計学者の故斧田大公望先生が解析し、市場シェアの3大目標値(74%、42%、26%)を導きだす。1962年のことである。その後、田岡先生が顧客のコンサルティングの現場で活用していき、1972年に著書「ランチェスター販売戦略」で理論と実務の体系を発表する。これによりランチェスター戦略が世に普及していく。

ランチェスター戦略は、市場シェアを判断基準として、競争地位別の戦い方を指導原理にしている。
そして市場シェアのナンバーワンを目指すことが結論である。ルーツが軍事理論の方程式で、判断基準がシェアである。すなわち、第1の差別化ポイントの「科学的」である。

田岡先生は、理論とコンサルティング経験を基に、市場シェアのナンバーワンを目指すための実務体系を確立した。日本の経営風土、流通構造、地域特性といった競争環境を踏まえて、コンサル先で成果をあげるための実務である。

市場参入戦略、地域戦略、販売チャネル戦略、シェアアップ戦略、営業戦略を体系化している。理論のみで営業現場でどのように使うのかの実務が乏しい理論が多いが、ランチェスター戦略は現場で使える。「汗の匂いのする戦略」といわれることもある。すなわち、第2の差別化ポイントの「実務的」である。

理論的で実務的であったことと、田岡先生は日本のコンサルタントの草分けであり、当時はいまのようにいろいろな理論や手法があったわけではない。多くの企業がランチェスター戦略の影響を受けてきた。

たとえば、トヨタは国内の普通乗用車の市場シェアが40%以上であることを重視しているが、これはランチェスター戦略の影響である。パナソニックの源流の旧松下電器産業のことを「マネシタ電器」という人がいた。格下のライバルメーカーの差別化した商品がヒットしそうになると、間髪入れずに同等品を市場に投入した。この「後出しじゃんけん」のようなやり方を関係者は「マネシタ電器」と揶揄(やゆ)したのだ。これはランチェスター強者の基本戦略のミートである。

80年代のはじめ、創業期であったソフトバンクやHISやフォーバルも大いに影響を受けて大企業になっていった。多くの企業がこれを学び、自社の戦略に取り入れ、成果を挙げてきたことから、ランチェスター戦略は「競争戦略・販売戦略のバイブル」と呼ばれる。すなわち、第3の差別化ポイントの「豊富な実績」である。

以上、ランチェスター戦略の3つの差別化ポイント、第1「科学的」、第2「実務的」、第3「豊富な実績」について解説した。さて、あなたの会社は、その主力商品の3つの差別化ポイントをどのようにまとめ、絞り込んでいるだろうか。社長には点検してもらいたい。

こう書くと、ランチェスター戦略は古いと思われたかもしれない。確かに歴史は長い。いまとは経営環境が大きく異なる時代に確立したものである。だから、いま、これを使うにあたっては、いまの時代に合わせてアップトゥデートしている。コンサルタントは理論のために存在するのではない。クライアントの持続的繁栄や課題解決のために存在するのだから。

時代を越えて、業界を超えて、経営規模を超えて、通用する普遍性のある原理原則と、時代に応じて、業界に応じて、経営規模に応じて、使い分けていく手法があることをわきまえていなければ、コンサルタントとして通用するものではない。


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