2021年02月22日
ランチェスター戦略の一丁目一番地は、弱者と強者とでは採るべき戦略が根本的に異なることである。競争条件が不利な弱者は、弱者の戦略に徹することにより活路を見出す。弱者の戦略には様ざまなものがあるが、結論的に重要なことは、差別化し、接近戦を展開し、一点に集中することで、集中した分野でダントツのナンバーワンを目指すことである。公式化すると次のようになる。
差別化×接近戦×集中=No.1
今回は上記の弱者の戦略の結論について解説する。
弱者の基本戦略は「差別化」である。弱者が強者のマネをして勝てるはずがない。武器の性能が同程度なら兵力数が多いほうが勝つというシンプルな原理から導かれたものだ。では、どのように差別化するのか。
差別化の原点は自社の武器である。強み、魅力、個性といったことだ。まずは自社の武器を棚卸ししよう。ここで大切なことは「自己客観化能力」である。自分自身の魅力に気づかない人が多いのと同様に自社の武器を客観視できない社長が多い。なぜ、自社が選ばれているのかを客観的に捉えていただきたい。
次にライバルにも武器があることを知ろう。どんな会社も、そこに顧客がいるなら、何らかの武器があるはず。整理し、切磋琢磨する。磨き上げて、顧客に強く必要とされる絶対的に優れた武器にしていく。他のどのライバルにもない独自性や、他のどのライバルよりも優れている優位性のある相対的に優れた武器にしていく。
絶対的、相対的に優れた武器のことを差別化という。武器がそのまま差別化になるわけではない。
「差別化」ができても、顧客のニーズと合致しなければ「価値」は生まれない。仕事にならない。売れない。どこにどのような「顧客ニーズ」があるのかを把握し、自社の「差別化された武器」と合致させていく顧客とのコミュニケーション活動のことを「接近戦」と呼ぶ。
「接近戦」とは、もともとは敵と近づいて戦う戦い方だが、ランチェスター戦略では顧客やエンドユーザーや消費者と心と心の接近戦を展開するとの意味で使っている。顧客のニーズを知り、顧客と共有し、自社商品がそのニーズを満たすものとして興味・関心を喚起する。自社や自分が購入先としてふさわしいとの信頼性を築いていく。
このコミュニケーションの量と質がライバルを下回っていては、磨き上げられた差別化も宝の持ち腐れである。接近戦とはコミュニケーションの「量」と「質」の優位性を築くことである。他社を相対的に上回り、顧客から絶対的な興味関心と信頼性が得られたら、差別化が効いてきて、購買につながる。
顧客から第一番目に思い起される存在感を築くことを「第一想起」という。顧客の心のなかでのシェアナンバーワンである。
接近戦の質の優位は集客・営業活動の差別化と言い換えることもできる。一方の接近戦の量の優位はいかにして築くのか。弱者は強者よりも経営資源に乏しい。ヒトもカネも少なく、モノのシェアも低い弱者がいかにして量の優位を築くのか。それは特定分野に「集中」することだ。
差別化とは、あらゆる顧客層のあらゆるニーズに対応できるものではない。汎用性のある商品・サービスは大企業や強者の得意とするところで、弱者の生存領域ではない。特定分野(特定の顧客層の特定のニーズ)に対応するのが差別化である。
弱者が接近戦を展開すべきは特定分野である。特定分野に集中することで弱者でも量の優位が築ける。集中とは量の優位である。
集中するから顧客がわかる。競合がわかる。市場がわかる。ノウハウが向上する。だから、差別化の質が向上していく。差別化、接近戦、集中は単独の戦略ではない。三位一体で取り組むことで相乗効果を発揮する。
ゆえに、集中した特定分野において勝つことができる。この勝ちは圧倒的でなければならない。ダントツのナンバーワンを目指さなければならない。ナンバーワンになれば、たとえ小さな特定分野であったとしても収益性が高まる。その余力で次なる特定分野でナンバーワンを目指す。
「差別化×接近戦×集中=No.1」を積み重ねていくのが、弱者の戦略の結論である。