2020年12月07日
一方、経営ではテスト用紙は配られず、問いもない。社長自らが問いを設定し、それに答えていく。その答えの正解は示されない。問いを自ら設定し、正解が示されない問いに答えるのが、社長の決定である。社長業は大変な仕事なのだ。
経営の決定には正解はないが、多くの場合に当てはまる原理原則はある。原理原則を踏まえた決定は正解となる確率が高い。だから、迷ったときに立ち返る原理原則をいくつもっているのかが社長に問われると前回の第6回で書いた。ランチェスター戦略は原理原則の塊のようなものだが、特に大切な5つの原理原則を示した。
今回は経営における問いの設定方法について2つの原理原則
・問題と課題の原則
・問題細分化の原則
を解説する。
「問題」と「課題」は似て非なる言葉である。
「売上が少ない」という状況は、問題か? それとも課題か?
問題である。
あるべき姿や目標(たとえば特定分野でシェアNo.1の42%、売上84億円を目指す3年後の中期経営目標)に対して、現在の状況(たとえばシェア36%、売上72億円の実績)であれば、12億円のギャップがある。あるべき姿や目標と、現状のギャップのことを「問題」という。
現状の売上が中期目標より12億円少ない72億円にとどまっていることが問題である。この問題を漠然と考えていても答えは出てこない。あと12億円をどう伸ばしていくのか、成長機会や経営課題を分析し、解決の方向性を示すものが課題である。
つまり、
・問題とは、あるべき姿・目標と現状のギャップである
・課題とは、問題を解決する方向性である
では、問題をどのように分析し、解決する方向性を示せばよいのか。
まずは、現状を細分化して捉えることである。
・事業別
・市場別
・商品別
・顧客層別/用途別
・価格帯別
・地域別
・営業部門別
・営業員別
……
そうすれば、よい部分、よくない部分が明確になる。よい部分もよくない部分も必ず要因がある。よい要因を明確化し、伸長策を打ち出す。よくない要因を明確化し、改善策を打ち出す。このように、問題を解決する方向性である課題は、現状を細分化して捉える。
「課題」という言葉は日常的には「解決しないといけない事柄」という意味で使う。分析をすると、解決しないといけない、よくない部分が気になるものだ。もちろん、赤字を垂れ流している部分は止血しなければならない。だが、止血が終われば、それ以上にそこに注力するよりも、優先すべき事柄がある。
優先的に取り組むべきは、よい部分である。強い部分をより強くするのが勘どころである。
ランチェスター戦略は、弱いところを改善解決するテコイレ志向ではない。強いところをより強く伸長するダントツ志向である。そして、ダントツに強い部分を積み重ねていくことで、特定分野でナンバーワンを目指す。
今回はここまで。