ビジネスは残念ながら弱肉強食です。
あらゆる業界で大手寡占が進み、弱小が淘汰されています。世の中が不景気になれば弱いものから犠牲になります。今、多くの弱小企業は未曾有の危機に瀕しています。
しかし、やり方次第で小であっても大に勝てます。弱者が逆転できるのです。勝てないまでも負けずに存続できます。そのやり方の事を「戦略」といいますが、戦略を「わかる」というレベルから「できる」というレベルになっていただくことを目的に本書を執筆しました。
私は、小が大に勝つ「弱者逆転」を使命として一点突破のマーケティング、我が国の競争戦略のバイブルともいわれる「ランチェスター戦略」を伝導しているコンサルタントの福永雅文です。世のため人のために事業を営む経営者も使命感あふれるビジネスパーソンも、会社が小さいがゆえに、あるいは会社が大きくても戦略が乏しいがゆえに、もがき苦しんでいます。そんな企業を戦略で支援することが私の使命です。ランチェスター戦略を企業内研修で伝授し、その会社ならではの応用・実戦方法をコンサルティングしています。なお、本書ではビジネスは戦であるとの私の信条から「実践」を「実戦」 と表記しています。ご承知おきください。
そんな仕事をしている私に、多くの悩める経営者やビジネスパーソンが相談なさいます。本書のの5つのエピソードは実話をもとに執筆し、ドラマチックなマンガにしてもらいました。ランチェスター戦略をどのように活用し実戦するのかを、第一話から第五話の5つのマンガでケーススタディしました。マンガにしたから、とてもわかりやすくなり、本質に迫ることができたと思います。
「ランチェスター戦略とは何か」は本編に譲るとしました、なぜ、必要なのか、有効なのかを端的に申しましょう。
「オーケストラの指揮者はどうして、タクト1本で大勢の演奏者を完璧にまとめあげられるのでしょうか」
と、かのP.F.ドラッガーは問いかけました。そして彼はこう言いました。「それは楽譜があるからです。」演奏者は楽譜で演奏し、タクトで心をひとつにしているのです。どんなに優れた指揮者も演奏者も楽譜なしには完璧な演奏はできません。楽譜は音楽の共通言語なのです。
ランチェスター戦略はビジネスにおける共通言語です。戦略の共通言語なき経営および営業活動は楽譜なしのオーケストラのようなもの。本書はビジネスの楽譜です、楽譜の読み方、演奏方法を具体的に指南するものです。
本書では、局地戦、一点集中主義、差別化、接近戦、No.1主義という大切な共通言語を5つの物語のタイトルにしました。
マンガの舞台は都会のビルの谷間にひっそりたたずむバー「LANCHESTER(ランチェスター)」。看板も出ていないので,見つける事が難しい。もしかしたら、必要な人にしか見えない店なのかもしれません。中に入ればクラシックなカウンターバー。枯れた感じのマスターと、なぜかメイド服のかわいい女の子。
こんな店なのに、名だたる企業の経営者も通うといいます。そう、この店は「悩めるビジネスパーソンの駆け込み寺」なのです。そして、今宵も、どこかで噂を聞きつけたのか、戦いに疲れたビジネス戦士が藁をもつかむ思いでやってきました。秘密の合い言葉は「ランチェスターください」。
登場人物を簡単に紹介しましたら、さっそく本題に入りましょう。
星野ラン
バーLANCHESTERを手伝う女子学生。
とてもかわいいのに口が悪くてケンカっぱやい。でも実は困ってる人、ビジネス弱者を見るとほおっておけない、やさしくておせっかいな子なのかも。バーのメイドだが、ランチェスター戦略の伝道師。
マスター
バーLANCHESTERのマスター。70歳。癒し系。
口が悪いランちゃんとお客さんを仲裁する。単なるバーのマスターではないようだ。世を忍ぶ仮の姿かも・・・・。
クロネコ
バーLANCHESTERのある路地裏に棲息するネコ。
ビジネス弱者を察知する能力があるようだ。マスターやランちゃんから「チェス」と呼ばれている。
第一話「局地戦」 佐藤和正 45歳
郊外にある住宅リフォーム会社経営。
社員10名の零細企業社長。売上がジリ貧のため、市場の大きな高級住宅街に支店を出したが、全くダメで経営不振に陥る。
第二話「一点集中主義」 鈴木純一郎 36歳
人材派遣会社ほか複数の会社経営。
グループ全体で社員70名程度の中小ベンチャー企業社長。多角化し売上は伸びてきたが、利益は増えず経営ピンチに。
第三話「差別化」 大和幸彦 35歳
社員200名程度の中堅缶詰メーカーの二代目社長。
創業社長の父親の死去にともない事業を継承したが、大手競合メーカーに押されて苦戦。